クラシックギター曲として屈指の知名度を誇る名曲「アルハンブラの思い出」。
哀愁漂う美しいトレモロ、中盤での長調への転調が印象的で、「いつかこの曲を弾きたい」とクラシックギターを手に取る方もいるくらいの楽曲です。
今回はそんな「アルハンブラの思い出」について、難易度や収録されている楽譜、作曲者や演奏者についてまとめてみました。
「アルハンブラの思い出」の魅力を、よりお伝えできれば幸いです。
※「まとめ」部分に要点だけ書きましたので、お忙しい方はそこだけでも見ていただけると嬉しいです。
目次
【忙しい方向け】「アルハンブラの思い出」まとめ
詳しくは各項に記載の通りですが、ざっくり書くとこのような形になります。
・作曲者
スペインの作曲家・ギター奏者「フランシスコ・タレガ」による作曲です。
・難易度
難易度は比較的高く、中級者向けとはいえ難しめ、2年程度の経験で演奏可と推察します。
効率良くマスターするためには「トレモロ奏法」及び、トレモロ曲における左手の運指のコツを理解することが重要で、それらを個別に練習することが必要になってきます。
・主な演奏者
定番曲のため、朴葵姫(パク・キュヒ)、猪井亜美、David Russell他、多数のギタリストによって演奏されています。
・楽譜
Amazonなどで比較的入手しやすい楽譜集に含まれています。
TAB譜とCDで学ぶクラシック・ギター
「ぷりんと楽譜」では、楽曲単独のPDF楽譜を購入可能です。
【PDF】アルハンブラの思い出 (楽譜)
「アルハンブラの思い出」の概要・作曲者
「アルハンブラの思い出」は、スペインの作曲家・ギター奏者、フランシスコ・タレガ(Francisco Tarrega)によって作曲された楽曲です。
クラシックギターならではの奏法、「トレモロ」を用いた3拍子の楽曲で、短調で展開される物悲しいメロディが印象的ながら、中盤では明るい長調に転調し、非常に美しいメロディが展開される名曲です。
タレガは1800年代後半、作曲家・演奏家として活躍し、「ギターのサラサーテ」の異名で通るほどでした。
ギター教師としても活躍し、ミゲル・リョベートやエミリオ・プジョルといったギタリストを輩出しました。
「アルハンブラの思い出」だけでなく、「ラグリマ(Lagrima)」や「アラビア風奇想曲 (Capricho Arabe)」といった、今日のクラシックギター界にとって重要な楽曲を多数遺しており、10歳の時点で「神童」と称され、カフェやレストランで演奏活動をしていたというから驚きです。
曲名の「アルハンブラ」とはスペインの「アルハンブラ宮殿」のことで、宮殿のインスピレーションから作曲したとされています。
楽曲タイトルも「アルハンブラ宮殿の思い出」と表記されることも多いです。
なお、2018~2019年には本楽曲にちなんだ「アルハンブラ宮殿の思い出」というタイトルの韓国ドラマが放送され、同楽曲も要所でBGMとして利用されたそうです。
「アルハンブラの思い出」の難易度
比較的難しめ、「上級寄りの中級」といった印象で、1~2年程度の経験者の方が「ちょっと先の目標」とするのに丁度良い難易度ではないかと思います。
一般的に「難曲」とされていますが、その大部分は「トレモロ奏法」と、「トレモロにおける左手の運指」が占めているため、一度要領を掴むと比較的スムーズになると感じます。
それぞれ個別に練習することで、効率良くマスターできます。
どちらかと言うと、テクニック的な難しさは「トレモロへの慣れ」が全てで、トレモロの粒が揃うようになってからは緩急や強弱・表現の部分の方が難しいといった印象があります。
特に転調後、高音に跳躍する部分や、エンディングでのリタルダンドなどはリズムの安定と緩急のバランス・両立が非常に難しく、研究のし甲斐があります。
表現に拘って練習・演奏するのが好きな方は、文字通り生涯取り組めるレパートリーになるはずです。
参考情報になりますが、私が学生時代に所属していたギターアンサンブルサークルでは、「2~3年生の方が演奏会で弾く」といったケースが多かったように思います。
体感としては前述の通り、「クラシックギターを始めて1~2年程度の人が、1年後くらいを見据えて取り組む」といった難易度の印象です。
とは言え、「やりたい曲をやる」ことが、上達への一番の近道です。
このページをご覧になっている方で「始めて間もない」とか「1年くらい」といった状況でも、少しずつ取り組まれることで、きっと弾けるようになると思います。
【おすすめ練習方法】「トレモロ奏法」の効率的な練習
大いに私見も含まれますが、以前私自身が「アルハンブラの思い出」に挑戦した際、よくやっていたトレモロの練習方法についてご紹介いたします。
【トレモロ練習】右手編【動画あり】
「親指(p)→薬指(a)→中指(m)→人差し指(i)」をワンセットとして、それを繰り返して同じ弦を弾くのがトレモロ奏法です。
この動きは、トレモロ曲以外では「連続して出てくる」ことはありません。
つまり、通常の奏法と違って「個別に練習しないと上達しない」ということになります。
なので、以下2パターンの練習を行います。
① 親指低音パターン
実際の楽曲に近いパターンでの練習になります。
以下のように全弦開放弦にて、「親指を低音・他の指を高音弦」で弾きます。
② 親指同弦パターン
通常、親指は低音を弾きますが、この練習では4本の指全て、同じ弦を弾きます。
なぜこういった練習をするかといいますと、「トレモロで同じ弦を弾くのが最もコントロール技術が必要だから」です。
要は、「これができれば、実際の曲で出てくる『親指低音パターン』は余裕」ということです。
練習イメージは以下の通り、開放弦で大丈夫ですので、連続で同じ弦を弾きます。
①②どちらの練習においてもメトロノーム等を利用し、一定のリズムで行っていただくことが大事です。
トレモロ練習動画
①②の練習をまとめた動画を作りましたので、日々の練習でご活用いただけると嬉しいです。
【トレモロ練習】左手編
左手は、「練習」と言うよりは「考え方」と言った方が正しいです。
トレモロは「4音で1セット」ですが、厳密には「1音目=低音:2~4音目=高音」で1セットです。
つまり、左手の運指について、優先度は以下のようになります。
・1音目(低音)→運指を間に合わせるのが最優先
・2~4音目(高音)→「1音目の後」で良いので、若干余裕がある
楽譜と照らし合わせるとこのようなイメージです。
トレモロ曲は忙しく焦りがちですが、「拍頭、1音目の低音を意識・最優先」と気付くことで、2~4音目が自然と付いてくるようになるはずです。
手前味噌で恐縮ですが、「アルハンブラの思い出」の演奏動画も上げておきますので「これらの練習を続ければ、これくらいは弾けるんだなー」といった目安にしていただけますと幸いです。
【動画】「アルハンブラの思い出」の運指解説
「アルハンブラの思い出」の運指・弾き方をまとめた動画を作成してみました。
デモ→TAB付運指解説の順で構成しております。
初めての方にもご活用いただけるかと思いますので、お役に立てば嬉しいです。
【動画】「アルハンブラの思い出」の反復練習
運指を覚えた後は、ゆっくりで良いので「一定のテンポで繰り返して弾く」といった練習が効果的です。
一緒に弾いて暗譜する用の動画も作りましたので、こちらもご活用いただければと思います。
「アルハンブラの思い出」の演奏者
朴葵姫
トレモロに提供のある朴葵姫(パク・キュヒ)の演奏。
安定感と粒の揃い方、流れるような美しさが印象的です。
猪井亜美
国内若手トッププロ、猪井亜美さんの演奏。
粒の揃い方と表現、総合的にとてもバランスが良く美しい、さすがの演奏です。
Ana Vidovic
海外の有名ギタリストAna Vidovic(アナ・ヴィドヴィチ)の演奏。
透明感のある音と緩急・表現の幅が素晴らしい演奏です。
David Russell
世界的ギタリストDavid Russell(デイビッド・ラッセル)の演奏。
温かみと深みのある音色が印象的な演奏です。
「アルハンブラの思い出」の楽譜
「アルハンブラの思い出」はクラシックギター定番曲として最もポピュラーな楽曲の一つなので、いつの時代もだいたいメジャーどころの楽譜集に含まれています。
TAB譜とCDで学ぶクラシック・ギター
「アルハンブラの思い出」はもちろん、「禁じられた遊び」や「鐘のひびき」、「蜂雀」といった定番レパートリーも含まれた楽譜集なので、1冊あると長く重宝します。
PDF楽譜(簡単運指・TAB付)
簡単運指・TAB付のPDFはこちらになります。※上記の「運指解説」動画と対応したものです。
【TAB・簡単運指】アルハンブラの思い出【弾き方動画あり】
おわりに
クラシックギターファンに愛される「アルハンブラの思い出」について紹介させていただきました。
私自身、初めてチャレンジしたのは随分昔の話なのですが、「当時は全く弾けなかったなあ。。」と、初心を思い出すことができました。
「いつか弾きたい」と目標にされることの多い楽曲ですが、一度弾けるようになっても、また何度でも練習・研究したくなる楽曲で、本当に生涯付き合っていける名曲だと感じます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。