「クラシックギターのかっこいい曲って何だろう?」
初級曲に慣れ、ワンランク上の曲を弾きたくなった方は、「かっこいい曲」を調べたくなるものかと思います。
この記事では古今東西のクラシックギターのかっこいい独奏曲をピックアップしてみました。
定番寄りの曲が多めですが、それらと比較すると知名度が低めの曲もあるかと思いますので、知っていただく機会になりましたら幸いです。
お忙しい方は「目次」より気になる曲だけでもご覧ください。
また、楽曲だけ流したい方はYouTubeプレイリストも作ってみましたので、以下より再生ください。
目次
クラシックギターのかっこいい独奏曲
タンゴ・アン・スカイ
クラシックギター奏者には説明不要なチュニジアのギタリスト兼作曲家、ローラン・ディアンスの代表曲です。
「スカイ」はフランス語で合成皮革のことで、言うなれば「偽物のタンゴ」というジョークの利いたタイトルになっています。
その名の通り、本場のタンゴのようなコテコテのリズムではなく、ところどころで「おっ」と思わせてくれるような表現や、飛び道具的な高速フレーズが出てきたりと、聴いても弾いてもとても楽しい良曲です。
3分ないくらいの、長すぎない尺なのも良いですね。
わかりやすく「かっこいい」のは、やはりパーカッションも出てくるサビ的なフレーズでしょうか。
このフレーズに憧れてここだけめちゃくちゃ練習したギターっ子も多いことと思います。
曲自体大変かっこいいですが、よくよく楽曲を見てみると余計な弦のミュートや高速フレーズでのハンマリング・プリング、オクターブハーモニクスから高速アルペジオまで、クラシックギターで重要な奏法が多数組み込まれていることが分かります。
なので、「初級曲は慣れてきたし、もう1つ上のレベルの曲に挑戦するか」という方はチャレンジしてみていただくと、網羅的に色んな奏法の練習ができて良いかもしれません。
なお、「タンゴ・アン・スカイ」については別の記事でもう少し詳しく書いてみましたので、良かったらご覧いただけると嬉しいです。
「タンゴ・アン・スカイ」の難易度・楽譜(TAB譜)・演奏者まとめ
動画
ディアンス本人の演奏です。
色んな方が弾いてますが、やはり本人のリズム感やタッチは圧倒的で聴き応えがありますね。
フェリシダージ
この曲の原曲は「イパネマの娘」で有名なボサノヴァの名作曲家、アントニオ・カルロス・ジョビンが、映画「黒いオルフェ」の主題歌として作曲したものです。
「ボサノヴァの曲」というと癒し系でまったりとしたイメージを持っている人も多いかと思いますが、タンゴ・アン・スカイで有名なディアンスがアレンジ、いや、もう「魔改造」と言っていいくらいに大胆にアレンジしました。
不協和音が積極的に使われた印象的な編曲となっており、1回聴くだけでかなり記憶に残ります。
例によってめちゃくちゃかっこいいんですけど、難易度はまあ「非常に高い」です。
16分のリズムで伴奏とメロディが混在するフレーズが常で、高速ハーモニクスの飛び道具的なフレーズやパーカッション的な要素も多分に含まれるため、運指を決めて徹底しないと指がこんがらがること必至です。
左手はもちろんですが、高速フレーズにおいては特に右手の「pima」どの指を使うかを綿密に決めておくことが求められます。(でもその代わりにめちゃくちゃかっこいいです)
因みにタイトルの「フェリシダージ」はポルトガル語で「幸せ」を意味する言葉で、邦題では「悲しみよさよなら」と訳されています。
ブラジル、リオのカーニバルの数日間の喜びと、それが終わったあとの虚しさを歌った曲とのことです。
動画
林祥太郎氏による演奏です。安定感と歯切れの良さが素晴らしい演奏です。。
ショーロス第1番
ブラジル出身の作曲家、エイトル・ヴィラ=ロボス(Heitor Villa-Lobos)の作曲。
ヴィラ=ロボスは独学で作曲を勉強し、ブラジルの音楽を取り込んだ作風で知られますが、その多作ぶりも有名で、生涯で1,000曲近くに及ぶ作品を遺しています。(紛失楽譜などもあり全貌を捉え切れていないというから恐ろしいですね)
「ショーロス第1番」は子気味良いリズムで繰り返される短調のフレーズから始まり、中盤では長調に転調してゆったりとした美しいメロディが展開されます。
後半はまた冒頭と同じ短調のフレーズに戻ってそのままエンディングとなります。
いわゆるテンションコード的なかっこいい和音も多用される、終始飽きずに聴いていられる名曲です。
※曲名は「ショーロスNo.1」と呼ばれることも多いです。
ちなみにヴィラ=ロボスは第14番までのショーロスを遺しており、楽曲ごとに楽器編成が異なっています。
第1番はもちろんギター独奏のために作曲されていますが、例として第2番はフルートとクラリネット、第11番などはピアノとオーケストラのために作曲されています。
独学でこれほど多くの楽器を理解し曲を遺したというのがヴィラ=ロボスのすごいところだと思います。
また、ヴィラ=ロボスはクラシックギター向けに練習曲も遺しています。
第7番などは高速フレーズがかっこよく「練習曲っぽさ」もそう強くないので、ヴィラ=ロボスに興味が出ましたら調べてみていただきたいところです。
動画
デビッド・ラッセル氏の演奏。
さすが世界的ギタリスト、かっこいいですね。。。
ブエノスアイレスの春
リベルタンゴで有名なアストル・ピアソラ(Astor Piazzolla)作曲のブエノスアイレスの四季の中の1曲です。
春~冬まで4曲ありますが、特にギター独奏では夏とこの春が演奏されている印象です。(母数は夏の方が多そうですが)
「四季」とは言いつつ、最初に作曲されたのは「夏」のみで、その後 「秋」→「冬」→「春」の順に作曲されて「四季」になったようです。(当初ピアソラには「四季」という構想はなかった)
曲の雰囲気は少々不安を感じさせるメロディ・和音が印象的で、ピアソラらしいかっこよさにあふれた名曲で、「タンゴの破壊者」の異名をとるのも頷けます。
ブエノスアイレスの四季はブラジルのクラシックギタリスト兼作曲家セルジオ・アサドによって独奏向けに編曲されており、その版で演奏されることが多いです。
単音中心の冒頭は徐々に音数が増え、低音の動きが見事なフレーズが続いていき、中盤のゆったりしたテンポになる部分はとても美しい響きで、クライマックスに向けての盛り上がりも魅せる、名編曲となっています。
(私もかつてこの「アサド編」の楽譜を手にしましたが、難しくて断念しました^^;)
出版されたのは20年近く前のようですが、今でも比較的入手しやすいようです。
「春」~「冬」までマスターして、コンサートプログラムとして演奏できるとめちゃくちゃかっこいいと思います。
動画
ロシアのギタリスト、ウラジミールゴルバッハ(Vladimir Gorbach)氏の演奏です。
楽譜
比較的今でも入手しやすいです(2回目)
ロンデーニャ
スペインのギタリスト兼作曲家レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ (Regino Sainz de la Maza)の楽曲です。
R・S・デ・ラ・マーサはミゲル・リョベートやアンドレス・セゴビアと同時期のギタリストで、1935年にはマドリード音楽院のギター科教授に指名されるほどの活躍でした。
正直、この記事の他の楽曲と比較すると、あまり有名ではない曲かと思いますが、「かっこよさ」という観点ではどうしても触れておきたい曲だと思い取り上げました。
個人的にはコテコテのクラシックギター独奏曲はそれほど得意ではないのですが、この曲は正統なクラシックギターの楽曲でありながら聴くたびに圧倒され「かっけえなあ、いつか弾きたいなあ」と思ってきました。
序盤のキレのあるフレーズ、中盤の美しいメロディ、後半のアルペジオの盛り上がりからのエンディングと、クラシックギターの魅力がこれでもかと詰まった名曲だと思います。
もっと国内プロが注目しても良い気がするんですけどねこの曲。。。
動画
かのデビッド・ラッセルの演奏。
国内で演奏されてる方が少ないのが寂しいですが、林祥太郎氏がアップされてたのでご紹介させていただきます。
大聖堂
パラグアイが生んだ最高のクラシックギタリスト兼作曲家、アグスティン・バリオス=マンゴレ(Agustin Barrios Mangore)の代表作です。
バリオスの作品は、1970年代にジョン・ウィリアムスの演奏によって知られるようになったっとされています。
大聖堂はバリオス自身の宗教体験に触発されて作曲されたとされており、バリオスのその他の作品でも有名な「最後のトレモロ」もまた宗教体験を基に作曲されたと言われています。
この曲は第1楽章~第3楽章まであり、各楽章とも非常に美しい名曲ですが、最も有名なのは高速アルペジオから成るフレーズが非常にかっこいい第3楽章です。
終始スピードの速いフレーズが続きますが、せわしなさなどは感じさせず、その「大聖堂」の名が示す通りの荘厳な雰囲気がよく表現された名曲です。
また、高速フレーズが続くものの意外と弾きづらい運指は(印象よりは)多くなく、バリオスのクラシックギターへの理解が非常に深かったことが伺えます。
この曲はクラシックギターの曲の中でも定番曲となっており、日本でも福田進一氏や村治佳織さんなど多くの方が演奏されています。
色んな方の演奏を聴き比べてみるのもとても面白いです。
また、2019年11月公開の福山雅治さん主演の映画「マチネの終わりに」において取り上げられている曲でもあります。
この曲がクラシックギター独奏曲として定番であることの証明の一つかと思います。
動画
アナ・ヴィドヴィッチの演奏。
世界的ギタリストだけあり流石の演奏です。(第3楽章は4:33~)
はちすずめ
アルゼンチンのギタリスト兼作曲家、サグレラスの楽曲です。
近年活躍されている国内ギタリスト、猪井亜美さんの代名詞になっていると思います。
「サグレラスはあんま知らないけど、はちすずめは知ってる」という方も多いかもしれません。(私も同じような感じです)
猪井亜美さんがYouTubeで「最速チャレンジ」といった企画もされているのでご存知の方も多いかと思いますが、この曲は一度聴いたら忘れられないであろうそのスピード感が最大の魅力で、多くのスピード狂を生み出した罪深い曲です。^^;
もちろん私も少年時代にジョン・ウィリアムスの演奏を聴き、
「なんだこのイカした曲は」
とこの曲の虜になり必死に練習しました。
クラシックギターと相性のいいEmキーの楽曲で、メロディとしては4度や8度のスライド含む跳躍が多い忙しい楽曲ですが、高速フレーズも開放弦が活用されており無理のある運指は意外と少なく、サグレラス自身が名手だったことが伺えます。
ちなみに「はちすずめ」とはハチドリのことで、曲としてもその「毎秒55回」と言われる羽ばたきをイメージさせる、粋な曲名です。
曲の長さ自体は1分強と大変短いですが、その分かっこよさが凝縮された曲ですので、プログラムでも飛び道具的に活用できると思います。
スピード狂の方はぜひ挑戦してみてほしい独奏曲です。
動画
猪井亜美さんの演奏です。
早回ししているかのような圧巻のスピードですね。。
アッシャー・ワルツ
ロシアのギタリスト兼作曲家ニキータ・コシュキン(Nikita Koshkin)の作曲です。
推理小説の大家エドガー・アラン・ポー(Edrar Allan Poe)の有名な作品「アッシャー家の崩壊(The Fall of the House of Usher)」にインスパイアされて作った曲であり、「キング・オブ・ギター」で名高いクラシックギタリスト、ジョン・ウィリアムスのために書かれたものでもあります。
原作の不気味な雰囲気がよく表現された秀逸な曲ですが、メロディや和音、中盤の盛り上がりからエンディングまで飽きさせない展開は非常に見事だと思います。
後半直前あたりでは、あまり見かけない「バルトーク・ピチカート」や、これまたクラシックギターでは珍しいチョーキングなどの奏法も見られ、視覚的にも面白いです。
「コシュキンの曲の中でも人気」と言われますが、それも納得です。
特に中盤のジャカジャカ弾くフレーズは慣れればそれほど難しくないので、この部分だけちょっとつまみ食いしてみても良いかもしれません。
動画
ジョン・ウィリアムスの演奏です。
サンバースト
現代の名ギタリスト兼作曲家、アンドリューヨーク(Andrew York)の代表曲です。
クラシックギターの独奏に興味を持つと、かなり早い段階でこの曲の存在を知ると思いますので、このサイトをご覧になる方の多くは既に知っているかもしれません。
また、トヨタの車のCMで村治佳織さんが演奏されていたので、それで知った方も多いかと思います。
ヨーク本人はもちろんですが、木村大氏、ジョンウィリアムスなど国内外で多くのプロが演奏しており、それぞれ魅力があるかっこいい演奏になっています。
曲全体を通して爽やかさと明るさがあり、中盤の低音パッセージの箇所は最初に聴いたときは「どうやって弾いてるんだ?」と思うくらいかっこいいです。
チューニングが変則的で、1・6弦を1音下げのD(レ)の音にすることで、開放弦を組み合わせたときの響きが独特の爽やかさを持ったものになります。
※俗にいう「オープンチューニング」に近い雰囲気ですね。
例の低音パッセージも、変則チューニングと開放弦を交えたハンマリング・プリングを組み合わせることで、聴いた雰囲気よりは弾きやすくなっています。(それでもまあ難しいですが。。)
動画
本当に色んな方が演奏していますが、やはりヨーク本人の演奏が一番かな、と思います。動画はイントロがついてる版ですが、いわゆる「サンバースト」は2:11~です。
そのあくる日
キューバのギタリスト兼作曲家レイ・ゲーラが、日本の名ギタリスト大萩康司氏のために書き下ろした作品です。
この曲はこれまたクラシックギターの名曲である、レオ・ブローウェル作曲の「11月のある日」のアンサーソングとされています。
「11月のある日」と併せて演奏すると素敵ですね。
前半はゆったりとした美しいメロディ、中盤はテンポが速くなってアルペジオも含めた巧みなフレーズが展開される、非常にかっこいい曲です。
曲の構成もなんとなく「11月のある日」と共通しています。
大萩康司氏に贈られた作品だけあって、氏による演奏が多いですが、時には前奏をつけて演奏されたりと、バリエーションに富んでいます。
楽譜としては比較的シンプルなものなので、譜面通りに弾いてしまうと味気なく、かといってテンポに緩急をつけすぎてしまうとくどくなってしまいます。
「かっこいい」と感じさせるには単純に弾けるようにするのとは別に、表現を研究する必要性が高い、長く楽しめる名曲です。
動画
大萩康司氏の演奏です。
「オリジナル」とも言える氏の演奏、やはり名演奏ですね。
おわりに・基礎練習の動画
クラシックギターのかっこいい独奏曲、参考になりましたでしょうか。
「かっこいい曲も好きだけど、美しい曲も好き」という方は、以下の記事もご覧くださいませ。
クラシックギターの美しい曲
また、「ちょっとこの辺の曲は難しすぎるな」という場合は難易度低めの独奏曲もまとめた記事がありますので、見てみていただけると嬉しいです。
クラシックギター初心者におすすめの曲
日々の練習については「クラシックギターの基礎練習」の動画を作ったので、ご参考いただけると嬉しいです。
TAB譜付き、動画と一緒に弾くだけなので続けていただきやすいかと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。