重奏。それはクラシックギターを嗜む人間なら誰もが「一度はやってみたい」と思う演奏形式。だって「かっこいい」から。
「一人ではできなかったこの曲だって、お前と(お前たちと)ならできちまうんだ」
重奏に取り組むメンバー、つまりは「魂の仲間」とだったら、素面でもこんな台詞を自然と交わすことができるのも重奏の良いところですね。まあ思い出すたびに「もがー!」と悶絶するわけですが。
冗談はさておき、今回はクラシックギター奏者が集えば自然発生的に「やろうよ」となりがちな重奏ですが、楽曲の選定に悩む場面も多いと思います。
そこで「かっこいい曲」をキーワードに、おすすめの重奏曲をピックアップしてみました。(参考にできる動画がYouTubeなどにあるか、楽譜の調達ができるかなどもポイントにしました)
演奏会のプログラムを考えるときや、「やろうぜ重奏」という流れになって楽曲を検討することになった際などにお役立ていただけると嬉しいです。
目次
二重奏(デュオ)
「3つの秋の小品」より第3楽章「センテナリオ通り」
アルゼンチンのギタリスト兼作曲家マキシモ・ディエゴ・プホール(Maximo Diego Pujol)作曲の、哀愁を帯びたクールな二重奏(デュオ)楽曲です。
かの有名ギタリスト福田進一氏とエデュアルド・フェルナンデス氏のデュオアルバムのための委嘱作品で、冒頭の流れるようなアルペジオと繰り返される旋律、中盤の転調が明るくもどこか哀しく、とても印象的ですね。
プロに向けて作られた楽曲だけあって難易度は高めですが、それに見合ってアンサンブル感がとてもかっこいい名曲です。
個人的には「もっと話題になっていいし、タイアップとかされてもいいくらいの名曲」だと思っていて、ぜひチャレンジしてほしいおすすめ曲です。
動画
色んな方の動画がありましたが「Tamm & Hernitscheck」という海外のギターデュオの演奏がクールでした。(もっと再生数伸びて良いくらい上手いと思うんですが。。。)
でも線路の上で弾くなんて危なくないのでしょうか。日本だったら炎上しそうです。
楽譜
「プホール:3つの秋の小品(2G)」収録。
現代ギター通販で購入できるようです。(ニッチ過ぎるのかAmazonなどでは取扱いがない模様。。。)
https://www.gendaiguitar.com/index.php?main_page=product_info&products_id=141866
三千院
クラシックギター界隈では「Sunburst」で有名な、かのアンドリュー・ヨークが京都の三千院を訪れ、そのインスピレーションから作曲したギター二重奏(デュオ)曲です。
日本がテーマなだけあって「和」を感じさせる旋律がかっこいい、印象的な楽曲です。
ところどころ長調っぽくなるフレーズで「ヨークっぽさ」を感じられるのは流石だと思います。
ちなみにヨークと言えば日本のギタリスト木村大氏のために「ムーンタン」を書き下ろしたことでも有名ですが、この「三千院」も木村大氏とデュオで演奏しているようです。(どれだけ好きなんだ。。)
元々かっこいい曲ですが、両氏のファンであればなおのことおすすめできる曲です。
動画
木村大氏・鳥山雄司氏のライブ演奏です。
楽譜
「アンドリュー・ヨーク ギター二重奏のための三千院」収録。
おそらくかなり入手しづらくなってる雰囲気ですが、ざっくり見た限りまだ取扱っている店舗もあるみたいです。
http://andante.aki.gs/eshop/item.cgi?item_id=MNS-gg-112&ctg_id=MNS-gg&page=5
タイミングが良ければメジャーどころの通販でも取扱があるかもしれません。
龍馬伝~紀行・いちむじんバージョン
佐藤直紀作曲。NHK大河ドラマ「龍馬伝」のテーマ曲で、ギターデュオ「いちむじん」が演奏した有名な楽曲です。
「和」を感じさせる印象的な旋律と大河ドラマに相応しい壮大さを感じさせる構成がかっこいいですね。
ぶっちゃけマイナーなジャンルであるクラシックギター楽曲(それも二重奏)がNHK大河ドラマのテーマ(エンディングとはいえ)を飾ったのはとても話題になり、当時のギター演奏会では十中八九プログラムに入っていたのを覚えています。
※意図してなのか難易度も極端に高くなかったため、アマチュアの方も二重奏にチャレンジして、コンサートでも使いやすかったのだと思います。
ちなみに当時は「クラシックギターって?」と聞かれたときに「あれだ、龍馬伝のやつ」と言えば伝わったのでちょっと便利でした。
正直「時期もの感」は強いですが、話題性を差し置いてもおすすめできる素敵な楽曲ですので、お気に召した方は演奏してみてはいかがでしょうか。
動画
「いちむじん」本人のライブ演奏です。(サイレントギターいいですね、練習からアンプつないでライブまでこなせる)
楽譜
「いちむじんギターデュオ・コレクション」収録。Amazonなどで入手可能なようです。
紫陽花
莉燦馮作曲。龍馬伝に続きギターデュオ「いちむじん」の代表曲で、とてもしっとりとした楽曲です。
おそらく他の楽曲よりも知名度は低いかと思いますが、哀愁漂うメロディがとても印象的な「隠れた名曲」だと思います。
中盤の、交互にメロディを追いかけるような掛け合いのアンサンブル感がとてもかっこいいですね。
難易度的にも(他の楽曲と比較すると)それほど高くなく簡単めなので、演奏しやすいこともおすすめポイントです。※曲想をしっかりつけて演奏するのは難しいと思いますが^^;
動画
「いちむじん」本人のライブ演奏です。
楽譜
「いちむじんギターデュオ・コレクション」収録。龍馬伝と同じ楽譜集ですね。この曲集は買いかもしれません。
Amazonなどで入手可能なようです。
カヴァティーナ
スタンリー・マイヤーズ作曲、映画「ディアハンター」のテーマで、かのジョン・ウィリアムズの演奏で有名な「カヴァティーナ」ですが、その優しくもどこか寂しさを感じさせる旋律は、二重奏とも非常にマッチします。
こうしたしっとり系の曲を弾きこなすのもかっこいいですね。
「カヴァティーナって言えばソロでしょ?」という方も多いかもしれません。
正直私もそのイメージの方が強いのですが、ソロで弾こうとすると(聴いているイメージとは程遠い)鬼のような連続セーハで手が攣りそうになるので、絶対にデュオで弾いた方がおすすめです。はい。
(この曲ソロで余裕を持って弾ける人ほんと尊敬します。。。)
動画
桐めぐみ氏&濱田貴志氏による二重奏。
アンサンブル感と、曲の優しい雰囲気が出ている素敵な演奏ですね。
楽譜
「ギター二重奏のためのアメリカン・アルバム」収録。
「アメイジンググレイス」など、他にも有名曲が収録されていたり、片方パートのみの模範演奏CD付で、練習もやりやすそうな良い楽譜集ですね。
二重奏~三重奏(デュオ~トリオ)
リベルタンゴ
「タンゴの破壊者」、アストルピアソラの代表曲ですね。
聴けば「あー、この曲ね」とピンとくる方も多いと思います。
別の記事でも紹介しましたが、正直この曲はどの楽器・演奏形態のバージョンでも「かっこいいなあ」と思わせてくれるポテンシャルがあると思います。
※葉加瀬太郎氏のバイオリン版や、押尾コータロー氏のアコースティックギター版が有名ですね。
二重奏版
動画
「Bensa-Cardinot」というギターデュオが演奏しているバージョンが編曲・演奏ともにめちゃくちゃかっこいいです。アンサンブル感も素晴らしいですね。
楽譜
上記「Bensa-Cardinot」本人のサイトからPDF形式で購入可能です。
楽譜版とTAB譜版があるあたり親切で、練習もしやすい点もおすすめです。
http://www.lesdisquesrouges.com/two-guitars.ws
※サイト見つけて秒で買っちゃいました。Paypalアカウントがあれば簡単に購入できます。
三重奏版
…こんなに上手い方の演奏挙げた後に(本当に)恥ずかしいのですが、実は当方も昔この曲を三重奏(トリオ)で編曲したりしていました。色々と公開処刑感がすごい。
楽譜と動画を挙げておきますので、「二重奏じゃなくて三重奏を探してたんだよね」って方はご覧いただけると嬉しいです。
動画
楽譜
楽譜販売サイト「Pascore」で扱っています。
https://store.piascore.com/scores/10498
三重奏(トリオ)
「シャボン玉」変奏曲
藤井敬吾作曲の、ギター重奏のために作られた作品です。
有名な「シャボン玉」の旋律を主題にした変奏曲で、慣れ親しんだメロディがあの手この手で料理(?)されていくのは聴いていてとても面白いです。
特に後半の短調でテンポ早めの箇所などは圧巻で、原曲のゆったりとした雰囲気はどこへやら、きっと「かっけえ」と思っていただけるでしょう。
「変奏曲」というとクラシック未経験の方(とか私)は拒絶反応を起こしがちだと思いますが、この曲のように慣れ親しんだメロディが主題だと、「すっ」と入ってくる点がおすすめですね。
コンサートプログラムとして取り入れやすいかと思います。
動画
「JOYS Guitar Trio」さんの演奏。
変奏曲らしい、表情豊かで素敵な演奏ですね。
楽譜
「藤井敬吾:ギター三重奏・四重奏のための『シャボン玉』変奏曲」収録。
光の街
東京ギターカルテットで有名な佐藤弘和氏が、仙台の東北福祉大学クラシックギター部の第30回定期演奏会の際に作曲した楽曲で、同大学では毎年の定期演奏会での定番の曲となっています。
現在では合奏曲としても人気で、他の団体でも多く演奏されています。
佐藤弘和氏はかつて仙台に住んでおり、そのインスピレーションも楽曲に盛り込まれているようです。
冒頭の綺麗なフレーズや明るいメロディ、時折入るクラップ(拍手)などは、確かに何となく「光」っぽい気もいたします。
ざっと調べた印象では合奏で演奏されるケースの方が多そうですが、「三重奏または合奏のため」の楽曲なので、三重奏で弾いても素敵な仕上がりな点もおすすめです。
動画
ギターアンサンブル・フェリハさんの演奏。(合奏形式ですが)
曲の爽やかな雰囲気が伝わってくる演奏ですね。
楽譜
「ギター三重奏または合奏のための光の街~In my hometown」収録。※PDF販売
https://www.gendaiguitar.com/index.php?main_page=product_info&products_id=142085
四重奏(カルテット)
ムーン・リバー
ヘンリー・マンシーニ作曲、映画「ティファニーで朝食を」の劇中で、オードリー・ヘプバーンが歌った曲としてとても有名な曲です。
クラシックギター界隈では「東京ギターカルテット」の佐藤弘和氏が編曲した四重奏アレンジが有名ですね。
原曲の優しい雰囲気そのままに、メロディの裏で流れるような助奏がとても美しい、名編曲だと思います。
正直「かっこいい」というよりは「きれい」という言葉が合っているような重奏アレンジですが、フレーズの受け渡しや中盤の盛り上がり、エンディングの美しさなど、とてもおすすめできるポイントが多いです。
アンサンブル感を出すのは難しいと思いますが、フレーズ自体の難易度としては「簡単」と言っていいレベルかと思います。
4人揃ったら是非チャレンジしてほしい四重奏曲です。
動画
ギターカルテット「アネモネ」さんの演奏。
曲の雰囲気がとても良く伝わってくる素敵な演奏ですね。
楽譜
「東京ギターカルテット 2/アメリカン・コレクション(GG412)」収録。
品薄感は強いですが、まだ取扱はあるみたいです。
こちらもタイミングが良ければメジャーどころの通販サイトに在庫があるかもしれません。
Lotus Eaters
アンドリューヨーク作曲。
クラシックギター界隈で有名なアンドリューヨークが所属していたLAGQ(Los Angeles Guitar Quartet )で有名な楽曲です。
楽し気な雰囲気とクールな掛け合いのようなフレーズに、自然と体が動いてしまいそうですね。
どちらかというと曲の雰囲気よりはリズム感・演奏テクニック側で感じさせる「かっこいい」な気がするので、曲自体の難易度もあって比較的「難しめ」かと思います。
※というかLAGQの編曲は基本簡単なものはなく、難しい気がします^^;
動画
ご本人の演奏がありました。
…実は以前この曲チャレンジしたこともあるのですが、この「ノリ」、アンサンブル感は全く再現できなかったです^^;
楽譜
「Andrew York. Lotus Eaters」収録。※単品譜
国内ではかなり入手しづらくなっているようで、海外通販に頼るのが吉かもしれません。
扱っているっぽいサイトもあり、ざっと見た感じ海外配送も行ってるみたいです。
https://www.lacg.net/product/york-andrew-lotus-eaters/
おわりに
「かっこいい・おすすめギター重奏曲」、参考になりましたでしょうか?
冒頭でちょろっと書きました通り、今回は以下の点も考慮しました。
・参考動画があるか
・楽譜の入手ができるか
※「かっこいい、やりたい」と思っても楽譜の入手ができなければ残念なので。
今回は比較的「ギター作品」を中心にしましたので、「もう少しポピュラー寄りの曲が知りたいなあ」という方は、「ギターアンサンブルのおすすめ曲」をまとめた以下の記事の方がマッチするかもしれません。
LAGQや東京ギターカルテットで他にもプッシュしたい楽曲や、五重奏以上の編成で紹介したい楽曲も多々ありますが、今回はこの辺りにしたいと思います。
※「こんな曲もいいよ!」とか情報あればコメント欄とかで教えていただけるととても嬉しいです。
重奏に興味を持って、「自分で編曲できるようになりたいな」と思った方は、このサイトの他の記事もチラ見していただけると嬉しいです。
以下の記事などでしょうか。
単純なギターアンサンブル編曲であれば、だんだんとできるようになっていただけるかと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。