クラシックギターアンサンブル・ソロギター編曲のやり方、楽譜アレンジ・編曲のコツやらあれこれ

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コラム

【理由を考える】オーケストラにギターがないのは何故か?

投稿日:

オーケストラにギターがないのはなぜ?
クラシックギターならオーケストラにあっても良いのでは?

そんな風に思う方もいらっしゃることと思います。

当方クラシックギター歴約20年、オケとのアンサンブルは未経験ですが「弦楽四重奏+ギター」の編成は経験あり、その時に痛感したことがあります。

その観点で書いていきたいと思います。

オーケストラにギターがない理由

【理由①】ギターとオケ楽器との音量差

オケ系楽器とのアンサンブルを経験した身として、「音量の差」がネックだと感じています。

バイオリンやビオラ等の弦楽器・トランペット等の管楽器の音量と比較し、クラシックギターの音量は微々たるものです。

何と言いますか、この画像みたいな印象が付いて回ります。私だけかもですが。

「小規模編成ならあるいは」

などと思われるかもしれませんが、

「勝負になりません笑」

というくらいの音量差があります。

実際にアンサンブルをした際も、ギターだけマイクで音を拾ってようやく太刀打ちできるくらいでした。
※それでも普段よりも強めのタッチになってしまいました。

会場も20~30名ほどの規模+弦楽四重奏ですらそうだったので、オケ+その規模の会場なんて、考えたくないくらいです。

【理由②】管弦楽器よりも音の減衰が早い

オーケストラで用いられる管弦楽器と比較し「音の減衰が早い」という点も、ギターがない理由の一つだと思います。

ギターは弾いた直後から音が減衰していき、伸ばすことができない楽器です。

どちらかと言えば、管弦楽器よりも木琴やティンパニ等の打楽器に近い性質です。

しかしながら、いざ合わせると管弦楽器・打楽器どちらのそれともマッチせず、浮いているように感じています。
※マイクで音を拾った際は特に

ピアノも同様に減衰しますがギターの方が圧倒的に減衰が早く、これまた「合わない」感が強いです。

浮いた結果としてソロ楽器として映えるようなら良いのですが、前述の通り音量が小さく目立たないので、オケの中で使いづらい楽器だったのだと感じます。

【理由③】「クラシック」時代の音響設備・作曲事情

いわゆる「クラシック」の時代の音響設備・作曲事情も、オーケストラにギターがない理由の一つだと感じます。

前述の通り、オケの中でギターが埋もれないようにするには、マイク等の音響設備が必須です。

マイクやスピーカーの技術が発達してきたのは1,800年代後半~1,900年代前半にかけてなので、「クラシック」の時代には当然ありませんでした。

そんな中、ギターのために音量諸々を考慮したお膳立てをするほどのニーズ・リターンが作曲者・演者・舞台スタッフ・聴衆にあったとは考えにくいです。

そうした考慮の必要のない、一般的な編成の方が扱いやすかったのだと思います。

また、クラシックの作曲者にとってギターは「作曲しづらい楽器」だったのだろうな、とも思います。

現代に残るギター曲の作曲者は「自身も一流の奏者」というケースが多く、「弾けなきゃ書けない」という傾向が、他楽器よりも強いように感じています。

もちろん、奏者でなくとも名曲を残した作曲者もいますが、代表的なギター曲の作曲家は以下のように「自身も名手」です。
フェルナンド・ソル (「魔笛の主題による変奏曲」など)
フランシスコ・タレガ (「アルハンブラの思い出」など)
アグスティン・バリオス (「大聖堂」など)

ギターをはじめ幾つもの楽器を学び、異なる楽器向けの作品を残したエイトル・ヴィラ=ロボスのような異色の作曲家もいますが、鍵盤楽器を得意としていたであろうオケ曲の作曲家の方々にとって、ギターを扱うのは避けたかったのだろうと感じています。

【理由④】ギター自体が独奏楽器として優秀

「ギターは小さなオーケストラ」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

この言葉の通り、ギターは最大で音を同時に6つ鳴らすことができ、1本でメロディ・和音・ベース音を奏でることが可能な楽器です。

そのため、ピアノと同様に独奏曲も多く、管弦楽器と比較して他の楽器とアンサンブルをする必要性が少ないです。

この点と前述の点が相まって、「無理矢理オケに組み込まなくても」といった状況になったものと考えられます。

【補足】オケ+ギターの名曲「アランフェス協奏曲」について

ギターの協奏曲として最も有名であろう「アランフェス協奏曲」について触れておきます。

本楽曲は確かに人気ですが、作曲者のロドリーゴはギター奏者ではなかったようです。

私見になりますが、曲中では「ギタリストは逆に思いつかんやろな」といった趣を感じるフレーズが多いです。

アランフェスに関してはそれも心地良いものに感じますが、その他の「ギター+他楽器」のクラシック曲が、一般的な編成と比較すると少数であるあたり、作曲者にとっては書きづらく、前述の通りの苦労を越えてまで書くほどのニーズもなく、要するに「相性が良くない編成」なのだと捉えています。

私見で大変恐縮ではありますが、正直なところ「クラシックでの他楽器とギターのアンサンブル」に良さを感じたことは少ないです。

「お互い無理してやってる」といった感がどうしても拭えず、アランフェスに関しても「これギター以外のが案外映えるのでは」などと想像しています。

あくまで「クラシックなら」でして、ポップスなどの歌ものでの「アコギの代わりにクラシックギター」といった編成は大好きです。

まとめ:オーケストラにギターがない理由

オーケストラにギターがない理由は、以下の通りです。

・圧倒的に音量差があって埋もれてしまう

・音の減衰が早く、オケ楽器内で浮きがち

・楽器自体に詳しくないと「良い曲」が書けない傾向が強い

・「良いギター曲」が書けるまでギターに集中すると、オーケストレーションまで手が回らない

・そもそもギター単体で「メロディ+伴奏」まで可能なので、オケと合わせる(組み込む)必要性も薄い

といった具合で、「両立しづらい」「必要性が薄い」という類のものだったのでしょう。

音響技術の発展した現代であれば、ポップスやロック曲の中でエレガットを使ったり、高性能なマイク使用によるギター協奏曲の演奏も容易になったと思いますが、「クラシック」の時代は、ギターのためにかけるコストとリターンが合わなかったのだと感じています。

音響技術やDTM等の技術が発達した現代では、アランフェス協奏曲に次ぐギター協奏曲が生まれても良いような気もしております。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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