ナイロン弦の豊かな響きが美しいクラシックギターの音色ですが、そのギター曲の中でも一際美しさに定評のある有名な楽曲をまとめてみました。
難易度の高いものから初心者向けのものまでありますので、「この曲いいな」とか「きれいな曲だな」とご興味を持たれた曲は、是非チャレンジしてみてください。
お忙しい方は「目次」から、知りたい楽曲だけでもご覧いただけると嬉しいです。
また、楽曲だけ流したい方はYouTubeプレイリストも作ってみましたので、以下より再生ください。
目次
- 1 クラシックギターの美しい曲・有名曲
- 1.1 カヴァティーナ(Cavatina)
- 1.2 アルハンブラの思い出(Recuerdos de la Alhambra)
- 1.3 ラグリマ(Lagrima)
- 1.4 そのあくる日(un dia despues)
- 1.5 大聖堂(La Catedral)
- 1.6 森に夢見る(Un Sueño en la Floresta)
- 1.7 聖母の御子(El Noi de la Mare)
- 1.8 無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード(Cello Suite No. 1 Prelude BWV1007)
- 1.9 鐘の響き(ショーロ)
- 1.10 亡き女王のためのパバーヌ(Pavane pour une infante defunte)
- 2 おわりに・基礎練習の動画
クラシックギターの美しい曲・有名曲
カヴァティーナ(Cavatina)
「カヴァティーナ」は1978年のアメリカ映画「ディア・ハンター」(The Deer Hunter)のテーマ曲として有名です。
イギリス出身の作曲家スタンリー・マイヤーズ(Stanley Myers)によるもので、「キングオブギター」で知られるジョン・ウィリアムズによって演奏されました。
ベトナム戦争を扱ったという同作からは想像できないほどに美しい旋律と、美しいながらもどこか寂しさを感じさせるコード進行がとても印象的な、ギターの魅力が存分に発揮された名曲です。
ちなみに、この曲は曲中でセーハが必要な場面が非常に多く、メロディがゆったりしているが故に休憩できるポイントも少なく、1曲通して弾くと左手がめちゃくちゃ疲れる鬼畜曲でもあります。(聴いてるときと弾くときで印象が本当に変わります)
個人的には5本の指に入るほど好きなギター曲なのですが、もう弾きたくないなあ。。。
昨今大活躍のギタリスト猪井亜美さんの演奏です。
「はちすずめ」のパワフルな演奏が印象的ですが、カヴァティーナのような繊細な楽曲も美しく、さすがの一言です。
アルハンブラの思い出(Recuerdos de la Alhambra)
「アルハンブラの思い出」(Recuerdos de la Alhambra)はスペインの作曲家にして「ギターの父」と言われる、フランシスコ・タレガ(Francisco Tárrega)による作品で、クラシックギタリストの間では説明不要なほどに有名な楽曲です。
「アルハンブラ宮殿の思い出」や「アランブラの思い出」といった表記をされることもあります。
この曲を弾くことを目標にクラシックギターを嗜まれる方も多くいらっしゃいますが、それも頷けるような美しいトレモロに終始する楽曲で、特に中盤で転調した場面の美しさはギター曲の中でも屈指のものです。
「最も有名なトレモロ曲」とされる、素晴らしい楽曲です。
※楽曲個別の記事も書きましたので、気になる方はご覧ください。
「アルハンブラの思い出」の難易度・演奏者・練習方法まとめ
Ana Vidovic氏の演奏です。安定感と表現・美しさが高いレベルでマッチした、聴いていて非常に心地よい演奏です。
ラグリマ(Lagrima)
「ラグリマ」は、「アルハンブラの思い出」と同じくフランシスコ・タレガが作曲した楽曲で、同曲と並んで有名なクラシックギター独奏曲です。「涙」という副題が付くケースもあります。
「アルハンブラの思い出」よりも難易度は低く、ギター初心者の方でも弾きやすいゆったりとしたテンポですが、メロディはとても美しい名曲です。
明るい長調のメロディで始まりますが、中盤では一転して短調に転調し、哀愁を帯びた雰囲気となるのも魅力です。
初心者の方にも親しみやすいですが、上達してからも表現追求のし甲斐がある楽曲です。
Tatyana Ryzhkova氏による演奏。
美しくもしっかりと芯がある音色で、短調になる部分では繰り返し時の強弱が明確で、全体的にとてもスマートな演奏です。
そのあくる日(un dia despues)
「そのあくる日」(un dia despues)は、キューバのギタリスト兼作曲家レイ・ゲーラが、日本の名ギタリスト大萩康司氏のために書き下ろした作品として有名です。
この曲は、これまたクラシックギターの名曲である、レオ・ブローウェル作曲の「11月のある日」のアンサーソングとされています。
「11月のある日」と併せて演奏すると素敵ですね。
前半はゆったりとした美しいメロディ、中盤はテンポが速くなり、アルペジオも含めた巧みなフレーズとなる、終始美しい展開の楽曲です。
前半はゆったり・中盤は加速という曲の構成も、「11月のある日」と共通しています。
大萩康司氏に贈られた作品だけあって、同氏による演奏が多いですが、時には前奏をつけて演奏されたりと、バリエーションに富んでいます。
楽譜としては比較的シンプルなものなので、譜面通りに弾いてしまうと味気なく、かといってテンポに緩急をつけすぎてしまうとくどくなってしまう、という側面もあります。
聴き手に「美しい」と思わせるには奏者の表現力が試されるかもしれませんが、とても味わい深い名曲です。
大聖堂(La Catedral)
「大聖堂」(La Catedral)はパラグアイが生んだ最高のクラシックギタリスト兼作曲家、アグスティン・バリオス=マンゴレ(Agustin Barrios Mangore)の代表作です。
バリオスの作品は、1970年代にジョン・ウィリアムスの演奏によって有名になったとされています。
大聖堂はバリオス自身の宗教体験に触発されて作曲されたとされており、バリオスのその他の作品でも有名な「最後のトレモロ」もまた宗教体験を基に作曲されたと言われています。
この曲は第1楽章~第3楽章まであり、各楽章とも有名ですが、最も有名なのは高速アルペジオから成るフレーズの第3楽章です。
終始スピードの速いフレーズが続きますが、せわしなさなどは感じさせず、その「大聖堂」の名が示す通りの荘厳で美しい雰囲気がよく表現された名曲です。
高速フレーズが続くものの、弾いてみると意外と弾きづらい運指は(聴いてる印象よりは)多くなく、バリオスのクラシックギターへの理解が非常に深かったことが伺えます。(まあめちゃくちゃ難しいんですけどね。。。)
Ana Vidovic氏による演奏。全編通して荘厳で美しい、圧巻の表現力です。
森に夢見る(Un Sueño en la Floresta)
「森に夢見る」(Un Sueño en la Floresta)は「大聖堂」と同じくバリオスの楽曲で、「アルハンブラの思い出」と同じく「最も有名なトレモロ曲」とされる名曲です。
※ちなみにもう1曲は同じくバリオスの「最後のトレモロ」です。
「アルハンブラの思い出」とは異なり、冒頭は長調でトレモロのフレーズではないですが、もうこの時点で美しいです。
トレモロのフレーズに入ってからは冒頭の空気感そのままに美しいフレーズが展開されます。
中盤では短調になる他、トレモロではなくなる場面やディミニッシュコードのような意外なフレーズが出てきたりもする、非常に表情豊かな名曲です。
後半はトレモロ曲としては比較的忙しい運指になったりエンディングでは高フレットでの押弦を求められるなど難易度も高いですが、相応に美しく、マスターしがいのある楽曲です。
バリオスの楽曲は総じて綺麗で幻想的な曲が多く、聴くのも弾くのも楽しいですね。(難しいですが)
バリオス作品をよく演奏されている印象が強いDavid Russell氏による演奏。
世界的ギタリストならではのトレモロの均整が完璧な、美しい演奏です。
聖母の御子(El Noi de la Mare)
「聖母の御子」(El Noi de la Mare)はスペインのカタロニア地方に伝わる古い民謡で、ミゲル・リョベートによってクラシックギター向けに編曲されました。作曲者は不明とされています。
曲名ではピンと来ない方かもしれませんが、クリスマスシーズンには巷で聴くこともあり、「この曲聴いたことある!」と分かっていただける方も多い有名な楽曲かと思います。
明るく優しい雰囲気のメロディが印象的で、親しみやすく美しい名曲です。
ここで紹介した他の楽曲に比べると、比較的弾きやすいので、初心者の方にもおすすめです。
美しさと弾きやすさを両立していることからも、リョベートがギターの名手だったことが伺えます。
※ちなみに、リョベートは先ほど出てきた「アルハンブラの思い出」、「ラグリマ」作曲者であるタレガの弟子で、ギターの巨匠アンドレス・セゴビアの師だったようです。
リョベートはカタロニア民謡をクラシックギター独奏向けの編曲で何曲も弾いており、クラシックギター界隈で有名な「アメリアの遺言」という曲とセットでコンサートプログラムになることも多い印象です。
「アメリアの遺言」も、哀しい雰囲気ですが、これまた美しい楽曲なので、ご興味があれば是非セットでマスターしていただきたいです。
パク・キュヒさんの演奏です。温かく美しい感じがします。
聖母の御子【楽譜/TAB譜】
無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード(Cello Suite No. 1 Prelude BWV1007)
「無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード」(Cello Suite No. 1 Prelude BWV1007)は、「音楽の父」ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach)の作で、元々はチェロ独奏用の組曲です。
特にこの第1番のプレリュードは有名で、テレビCMで使われることも多い美しい楽曲です。
その曲が何故クラシックギターで演奏されているかというと、アンドレス・セゴビアが積極的にバッハ作品のヴァイオリン・チェロやリュート組曲をクラシックギター向けに編曲・演奏していたためで、同曲はその中でも有名なものです。
洗練された美しいメロディ・フレーズがとても印象的で、とても1700年代の楽曲とは思えない、今聴いても新鮮さを感じる名曲で、今なお多くのギタリストによって演奏されています。
難易度的にも、他のバッハ作品よりも演奏しやすいので、中級者の方に非常におすすめです。
Tatyana Ryzhkova氏による演奏。
セゴビアの演奏と比べるとゆったり目ですが、それゆえに一音一音の美しさが際立っています。
鐘の響き(ショーロ)
「鐘に響き」(ショーロ)は、ブラジルのギタリスト兼、作曲家、J.ペルナンブーコの作とされる楽曲です。※作者不詳とされることもあります。
「ショーロ」という言葉自体は、ブラジルのポピュラー音楽のスタイルを意味し、ポルトガル語で「泣く」を意味する「chorar」からついたとされます。
本楽曲も、コテコテのクラシック曲というよりはポップス寄りの雰囲気といった感じの、明るく美しいメロディが印象的な楽曲です。
クラシックギター界隈ではよく演奏され、楽譜集などに載っているケースがとても多いことからも、多くの方に親しまれていることが伺えます。
難易度もそれほど高くなく、楽曲の美しさの割に比較的弾きやすいので、おすすめ度は高い有名な楽曲です。
Tatyana Ryzhkova氏による演奏。曲のイメージそのまま明るく美しい名演です。
亡き女王のためのパバーヌ(Pavane pour une infante defunte)
「亡き女王のためのパバーヌ」(Pavane pour une infante defunte)は、「ボレロ」で有名なフランスの作曲家モーリス・ラヴェル(Joseph Maurice Ravel)が1899年に作曲したピアノ曲です。
ラヴェルの代表曲の1つと言えますが、意外にも当時の評価は賛否両論だったようで、世間からは好評だったもののラヴェルの周りの音楽家からはあまり評価されず、ラヴェル自身も「大胆さに欠ける」「かなり貧弱な形式」といったコメントをしていたそうです。
(スピッツのボーカル草野さんが「ロビンソン」について「あの曲がなんで売れたかわからない」って言ってるみたいですし、自分の作品には批判的になるんですかね。。)
楽曲としては、ドラクエなどのゲームBGMにも出てきそうな、現代的な雰囲気もする、とても美しい楽曲です。
ギター曲として弾かれるようになった経緯は掴めませんでしたが、プホール編やディアンス編のアレンジがあることから、長く親しまれている楽曲であることが伺えます。
【楽譜リンク】
https://www.gendaiguitar.com/index.php?main_page=product_info&products_id=116875
https://webshop.yamahamusic.jp/import/products/detail.php?product_id=86628
大萩康司 氏による演奏です。
おわりに・基礎練習の動画
クラシックギターの美しい楽曲・有名な曲についてつらつらと書かせていただきました。
本当はここに載せきれないくらい、他にもたくさん美しい楽曲があるのですが、まずは親しみやすいものから挙げてみました。
こうしてみると、タレガやバリオスの楽曲が多い印象で、彼らの作曲センスが如何に秀でていたかを改めて知る機会にもなりました。
この記事をきっかけに、クラシックギター曲をより広く知っていただけると嬉しいです。
練習の際には、「クラシックギターの基礎練習」の動画をご参考いただけると嬉しいです。
TAB譜付き、動画と一緒に弾くだけなので続けていただきやすいかと思います。
「難しい曲」、「中級者におすすめの曲」についてもまとめてみましたので、よかったら是非ご覧ください。
クラシックギターの難しい曲・難易度の高い曲
クラシックギター中級者におすすめの曲
最後までお読みいただきありがとうございました。