編曲したアンサンブル譜をいざギターで弾くと、なんかごちゃごちゃして聴こえる
という状況もあり得るかと思います。
こちらの記事で書いているように、ピアノ譜をそのまま割り振った場合は良いのですが、「ピアノ譜の音の高さをそのまま再現できないので、オクターブ上げる(下げる)」といった形で合奏譜を作ろうとした場合、上記の状況になりがちなのではないかと思います。
https://guitar-en.jp/2018/10/22/3step/
そうした状況になった場合の極力ごちゃごちゃさせないための編曲のやり方、各パートの音域に関するコツについて書いていきます。
忙しい方は「目次」からご興味のある内容だけご覧ください。
もっと興味のある方は、ギターアンサンブル編曲の実践的なやり方がわかる以下のnoteを見てみていただけると嬉しいです。
【誰でもできる】ギターアンサンブル編曲の手順書
各役割の、だいたいの担当音域
役割ごとの、だいたいの担当音域は以下の通りです。
記載の通りですが、おおよそこんなイメージです。
・メロディ→高音域:2弦開放「シ」〜(1弦12フレット「ミ」)
・和音→中音域:4弦開放「レ」〜2弦3フレット「レ」
・ベース音→低音域:6弦開放「ミ」〜4弦2フレット「ミ」
上記の図をご確認いただけると分かるかと思いますが、だいたい各役割で1オクターブずつ使うイメージになります。
というのも、「そうしないとごちゃごちゃして聴こえる」ためです。
※もちろん、なにがなんでもそうするべきではなく、「なるべくそうする。そうしない(できない)状況はできるだけ避ける」くらいの指標です。
クラシックギターの合奏は、オーケストラやバンドなどと異なり、全く同じ楽器を用いて行われます。
合奏譜上では各パート毎に分かれているので気づきにくいのですが、いざ合奏を行った際は、乱暴に言えば「同じ種類の音が、同じような高さで大量に鳴っている」状況になります。
こんなイメージですね。
合奏譜上では分かれているように見えますが
まとめると(ギターアンサンブル上)、こうなるわけです。(見づらい。。。)
忘れがちなのですが、「クラシックギターの合奏を聴くお客さんからは、このように聴こえている」という視点(聴点?)は、失くさないでいただけると嬉しいです。
特に、動きのあるパートが密集したときなどは顕著にごちゃごちゃしてしまいます。
なので、「それぞれの役割は、オクターブ程度離すのが編曲のコツなんだなー」とお考えいただけると嬉しいです。
以降は、各役割について触れていきます。
メロディの音域
ギターアンサンブルにおいて、一番目立たせたい役割になりますので、高めの音を使ってあげた方が良いです。
また、なるべく音の通りが良い1〜2弦を使うことで、他のパートに埋もれにくくすることができます。
※低音側の弦は太いため、「貫通力」の弱い音になりがちです。(温かみのある音を出したい場合は低音弦を活用することも多いですが)
最高音を(1弦12フレット「ミ」)としているのは、厳密な理由ではありませんが、それ以上の高音については以下の傾向があるためです。
①難易度が高い
クラシックギターは、構造上12フレットよりも高いフレットはボディ上となっており、13フレット以上の音を弾くのはシンプルに「難しい」です。
一部のエレガット(エレアコのクラシックギター版)はカッタウェイになっていて、15〜16フレットくらいまでなら弾きやすいものですが、クラシックギター合奏でエレガットを使うことは稀だと思います。
それほど速度のないフレーズであれば、難易度的には大丈夫かもしれませんが、その場合は以下の問題も出てきます。
②音の減衰が早い
クラシックギターという楽器は、「弦を指で弾く」という極めてシンプルな仕組みで音を出しています。
そのため、弦が細い高音弦であるほど、また、実際に振動できる弦長が短くなる高いフレットであるほど音の減衰が早く、つまりは「音が長く伸びにくい」ということです。
高フレットの音を使うことで、ギターアンサンブル上、
メロディだけが極端に早く減衰し、相対的に伴奏の音が強く聴こえる
という状況になりやすいということになります。
上記2つの点から、13フレット以上の音は、積極的に使うことは避けたほうが良いかと思います。
※もちろん、「原曲がそもそもその高さの音のメロディである」など、使わないと曲として成り立たないという状況の場合は使うべきで、「敢えて13フレット以上の音にする」といった編曲は避けるべき、と考えていただけますと幸いです。
和音の音域
和音については、メロディやベース音と干渉しにくい音の範囲を使う他、「低すぎる音を使わない」とお考えいただくと良いかと思います。
というのも、ちょっと小難しい話になるのですが、あまりに低い音で、密集した和音を鳴らすと、倍音とかの関係から「ロー・インターバル・リミット」の状態になり、和音が濁って聴こえやすくなってしまうためです。
ざっくり例を示しますと、同じ和音でも高さによって
よりも
の方がきれいに聴こえる
というものです。
そんなに詳しくは語り(いや、語れ)ませんが、
低音域で、近い音を重ねた和音は避けたほうがいいんだなー
くらいに考えていただくくらいで、実践的には大丈夫かと思います。
ちなみにですが、ピアノ譜から和音を引っ張ってくる際、「この和音、ギターじゃ弾けないな」という場合もあるかと思います。
例として、こんな和音の場合です。
ファ・ラで5〜6弦を使うので、ドの音(紫部分)が弾けないですね。※上記高さの「ド」は、4弦以上では出せません。
そうした状況の場合は、「一部の音をオクターブ上に持ってくる」といった対応でOKです。
和音というのは案外ざっくりしたもので、「同じ構成音が鳴ってるなら、高さは(ある程度)適当でもいいよ」という、懐の広い存在です。
なので、上記の場合などは、
こんな風に、ファとラをオクターブ上に持ってきても、大勢に影響はなかったりします。※このように構成音を変えずに音の高さを変えることを「転回」といいます。
そのため、再現が困難だったり、極端に運指が困難になる和音が出てきた場合は、和音を転回し、現実的なものに変えてしまうと良いかと思います。
ベース音の音域
ベース音については、正直あまり特記事項はないです。
「減衰しにくい低音弦、4〜6弦を使う」くらいで、他は状況に応じて以下、くらいでしょうか。
・動きの多いフレーズの場合は、動きが他のパートに埋もれないよう、他のパートとの音の間隔を取る。
・動きの少ないフレーズの場合は、上記の「ロー・インターバル・リミット」に気をつけ、和音パートの最低音を高めに取ってベース音と離す
備考
「メロディ・和音・ベース音」という3つの役割のときはわかったけど、弦楽器とか、他にメロディ相当に動きのあるパートがあった場合はどうするの?
という声が聞こえてきそうです。
その場合、はっきり言って「オクターブ離す」といったことは難しくなってきて、多少他のパートと干渉する状況が発生してきます。
完全に避けるのは難しいため、「中音域〜高音域を使い、メロディの動きとは極力干渉を避ける」と考えていただくと良いかと思います。
※実態として、弦楽器相当のパートは、和音と干渉する中音域(4弦開放「レ」〜2弦3フレット「レ」)が中心になるかと思います。
また、和音の音量をちょっと抑えめにしてもらうなどの工夫をすることで、音域がモロ被りでも動きが埋もれにくくなります。
※上で挙げた例(以下の図)などはモロ被りもいいとこですが、上記工夫で突破可能な類です。
まとめ
ギター合奏譜を編曲するにあたっては、各パートの役割を、できる限りオクターブ程度離し、音の動きが干渉しないようにする。
冒頭でも触れた内容ですが、ギターアンサンブル編曲の実践的なやり方がわかる記事をnoteにてまとめましたので、ご興味のある方は見てみていただけると嬉しいです。
【誰でもできる】ギターアンサンブル編曲の手順書
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。