クラシックギターを嗜む方で知らない人は少ないであろうディアンスの名曲「タンゴ・アン・スカイ(Tango en Skai)」。
いわゆるゴリゴリの「タンゴ」と比較し、どこか親しみやすい雰囲気や、パーカッション的要素もあるサビのフレーズが魅力です。
要所要所で見られるスケールやアルペジオの高速フレーズも、クラシックギタリストを魅了する理由の一つだと感じます。
そんな魅力的なこの曲について、難易度や収録されている楽譜、作曲者や演奏者についてまとめてみました。
既に有名な「タンゴ・アン・スカイ」ですが、その魅力をよりお伝えできれば幸いです。
※お忙しい方は「まとめ」部分に要点だけ書きましたので、そこだけでも見ていただけると嬉しいです。
目次
【忙しい方向け】「タンゴ・アン・スカイ」まとめ
詳しくは各項に記載の通りですが、ざっくり書くとこのような形になります。
・作曲者
フランスのクラシックギタリスト・作曲家「ローラン・ディアンス(Roland Dyens)」による作曲です。
・難易度
中級~上級者向け・~数年程度の経験者が演奏可と推察します。
「比較的難しい曲」と言えますが、運指を考えて練習することで十分演奏可能な良曲です。
・主な演奏者
作曲者本人であるディアンスはもちろん、国内では村治佳織さん・大萩康司さん・猪井亜美さんなどが演奏されています。
海外の方ではAlexandra Whittingham(アレキサンドラ・ウィッティンガム)さん、Wiktoria Szubelak(ウィクトリア・シュヴェラク)さんなど。
・楽譜
(いつの時代も)Amazonなどで比較的入手しやすい楽譜集に含まれています。
ありがたいですね。
2020/9現在では「クラシック・ギターのしらべ ベスト・セレクション」が入手しやすく、TAB譜・模範演奏CDもついているのでおすすめです。
「タンゴ・アン・スカイ」の概要・作曲者
「タンゴ・アン・スカイ(Tango en skai)」は、フランスのクラシックギタリスト・作曲家「ローラン・ディアンス(Roland Dyens)」による作曲です。
曲名の「スカイ(Skai)」とは、「『なめし皮』を意味するフランス語」だと解説されることが多いですが、正確には「1960年代にドイツの皮革メーカー『Konrad Hornschuch AG』が製造していた合成皮革の登録商品名」とのことで、そこから派生して「偽物の革」などを指す表現となりました。
同曲はしばしば「偽物のタンゴ」といった表現で語られますが、ディアンスらしいお洒落なタイトルだと感じます。
この楽曲は1985年に出版されましたが、元々はディアンス本人が「(1978年に)パリで行われたパーティのときに即興演奏したもの」と記しています。
ディアンスの即興演奏能力の高さが伺える名曲です。
【参照】タンゴ・アン・スカイ | ディアンス・ナイト
http://dyens.kga.tokyo/tangoenskai/
国内外で非常に多くの方が演奏しており、いわゆる「クラシックギター曲」と比較して親しみやすいフレーズが多いためか、日本では村治佳織さんの演奏でテレビCMの中で使用されたことまであります。
・トヨタ「アリオン」CM
2000年代前半くらいのことでしたが、この頃は「タンゴ・アン・スカイ全盛」と言っても良い印象で、私も含めこの曲のサビのフレーズ(ギターを叩くとこ)を皆こぞって弾いていたのを覚えています。
近年クラシックギター曲の中でも屈指の人気を誇る、名曲と言えます。
「タンゴ・アン・スカイ」の難易度
高速スケール・高速アルペジオやハンマリング・プリングといったテクニカルなフレーズが頻出する、「比較的難しい曲」と言えます。
ざっくりですが、中級~上級者向け・~数年程度の経験者が演奏可と推察します。
しかしながら、前半の高速スケール・中盤の高速アルペジオなどは「1音1音運指を決めて練習することで十分現実的なフレーズとなる」といった設計になっています。
弦跨ぎの際に逆指にならないようにしたり、同じ指を連続して使用しないようにすることを徹底すれば、難易度もだいぶ下がります。
ディアンス自身がギターの名手だったこともあり、非常に合理的な曲となっています。
参考程度ですが、私が学生時代に所属していたギターアンサンブルサークルでは、早い人は1年程度の経験で演奏可能になる、といったケースも見られました。
「1年程度の経験でも頑張って練習すればマスター可能」といった印象ですが、社会人になってからクラシックギターを始めた方など、まとまった練習時間が取りづらい方は2~3年など、ある程度時間がかかる難易度かと思われます。
が、「好きな曲に取り組むのが上達の近道」ですので、この曲が好きな方はぜひ取り組んでみていただきたいです。
中長期的な目標としても最適な曲だと思います。
「タンゴ・アン・スカイ」の演奏者
※敬称略。
ローラン・ディアンス(Roland Dyens)
作曲者であるディアンス本人の演奏。「原点にして頂点」といった印象です。
力みを全く感じさせないフォームから繰り出される音色の幅と音量のダイナミックレンジは圧巻です。
村治佳織
・独奏版
「正統派」といった印象のする、美しい演奏です。
・弦楽器アンサンブル版
ギター1本とはまた違った魅力がある、これまた素敵な演奏です。
大萩康司
音色の幅が凄まじい、圧巻の演奏です。(特に00:51~00:52あたりの唸るような音とか、どうやったら出るんだろ。。
猪井亜美
例の高速スケールなどは誰よりも音の明瞭さとスピード感があり、流石の演奏です。
他の方と比較し、2拍3連のリズムをきっちり弾かれているのも良い味で、全体的にスピード感があって心地よいです。
Alexandra Whittingham
「屋外で(聴衆は)お酒を飲みながら」というなんだかお洒落なシチュエーションでの演奏。
「芯がありつつも優しい音色」といった印象の、端正な演奏です。
Wiktoria Szubelak
細かなアレンジは異なりますが、村治佳織さんと同様の弦楽器とのアンサンブル版です。
※前奏がありましたが、原曲相当の箇所でリンクを貼っています。
「タンゴ・アン・スカイ」の楽譜(TAB譜)
「タンゴ・アン・スカイ」は近年クラシックギターの定番曲・名曲として親しまれているので、いつの時代もだいたいメジャーどころの楽譜集に含まれています。
またTVCMで取り上げられるなどで、より広く知られる曲になってほしいところです。
「クラシック・ギターのしらべ ベスト・セレクション」
こちらの楽譜集は比較的入手しやすく、TAB譜・模範演奏CDもついているのでおすすめです。
初心者の方などは、特にこだわりがなければこの楽譜を選ぶと無難で良いかと思われます。※他、「カヴァティーナ」や「さくら変奏曲」といった名曲も収録されているので、練習で長く活用できると思われるためです。
Tango en Skai(フランス語)楽譜
こちらはフランス語の楽譜で、「タンゴ・アン・スカイ」1曲のみです。※TAB譜はなし。
ディアンス本人によって作品の概要も記されている、という点から、この曲の熱烈なファンの方はこちらの楽譜を手に取られても良さそうです。
改訂新版 アコースティック・ギターとらの巻 クラシック・ギター ベスト選曲集2
人気の高いクラシックギター曲を集めた楽譜集です。※TAB譜なし。
「タンゴ・アン・スカイ」はもちろん、「サンバースト(A・ヨーク)」や「ブエノスアイレスの夏(A・ピアソラ)」など、クラシックギター愛好家が興味を持ちそうな楽曲も含まれている点が良いです。
「タンゴ・アン・スカイ」で難しいフレーズの参考運指
私見になるので恐縮なのですが、多くの方に膝をつかせてきたであろう例の「序盤の高速スケール」について、「こうすると比較的弾きやすいですよ」という参考運指・コツをご紹介します。
万人にとってベストな運指ではないかもしれませんが、難所を打破する一助になりましたら幸いです。
〇楽譜中の記号について
クラシックギター初心者の方向けに、運指で使う記号についてご説明します。※これは知っておくと、読譜力がグッとアップします。
【右手】
・p=親指
・i=人差し指
・m=中指
・a=薬指
【左手】
・1=人差し指
・2=中指
・3=薬指
・4=小指
〇元々の楽譜
元々のフレーズ的にはこんな感じの、32分の連符が続きます。真っ向から弾こうとすると、指がこんがらがって難しい箇所です。
〇運指参考例
以下のように、「ハンマリング活用+右手の同じ指が連続しないように意識」とすると、一気に現実的なフレーズになります。
本当なら数多のプロの方みたいに、あまりハンマリングとか使わずにフルピッキングで粒立ち良く弾きたいものですが、「成功率を上げたい」という方には大変おすすめの運指になります。
おわりに
クラシックギターファンを魅了し続ける名曲「タンゴ・アン・スカイ」について簡単に紹介させていただきました。
この曲についてはけっこう知っているつもりでしたが、今回改めて調べる中で知らなかった方が近年演奏されていることを知れたりと、いつでも新たな発見をくれる素敵な曲だと感じました。
ぜひ多くの方に興味を持っていただき、また演奏していただけるといいなと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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