「おおよそ編曲もできてきたけど、実際にギターで弾いてみるとけっこう難しい楽譜になっちゃったかも。。。」
編曲は案外スムーズに進んだけど、いざアンサンブルをしてみると、思ったより難しくて弾けず、
「もう少し簡単なフレーズにしたいけど、どんな感じで編曲すればいいのかわからない」と悩みを抱える。
そんな経験はありませんでしょうか。私は割とあります。
楽譜を作る段階で気づければ良いんですけど、なるべくギターを触ってフレーズを確認しながら編曲しても、悲しいことにこうした事故?はちょくちょく起きるものです。
この記事では、そんな状況になったときのため「こんな感じでアレンジすれば大丈夫ですよ」といった解決策・裏技をつらつら書いていきたいと思います。
まず、「難しくて弾けない」というケースは、大きく分けて以下の三つだと思います。
〇和音の音数が多く、左手が追いつかない
〇フレーズが速く、右手が追いつかない
〇ポジション移動が難しく、前後でもたつく
多くの場合、「左右どちらかの手が追いつかない」ことに起因しているはずです。
では、それぞれのケース毎に解決策を書いていきます。
忙しい方は「目次」からご興味のある内容だけご覧ください。
もっと興味のある方は、ギターアンサンブル編曲の実践的なやり方がわかる以下のnoteを見てみていただけると嬉しいです。
【誰でもできる】ギターアンサンブル編曲の手順書
目次
和音の音数が多く、左手が追いつかない場合
一口に「左手が追いつかない」と言っても、実際には
・難しい押さえ方なのに、運指のための時間を十分に確保できない
・単純に押さえるべきフレットの間隔が広すぎて、手のサイズ的に間に合わない
といったケースがあると思います。
が、解決策としては凡そ共通していて、
「重要度の低い音を弾かないようにする」
という一言に尽きます。
「音に重要度なんてあるの?」
と思われるかもしれませんが、多かれ少なかれ「ある」とお答えしておきます。
音楽理論的なお話も絡んでくるのですが、そんなに突っ込んだお話にならないよう、簡単な判別方法と、ちょっと高度な判別方法の2つを書いておきます。
和音における要らない音の簡単な判別方法(条件的判断)
まず、和音において不要な音の簡単な判別方法として、
「すでに他のパートで鳴っている音」を、和音から間引くという方法を挙げておきます。
そうすることで、音楽理論的には音の構成・役割を損なうことなく、難しい和音を簡単にすることが可能です。
ちなみに、ここで言う「すでに他のパートで鳴っている音」は、オクターブ違いの音も含みます。
※音楽理論的に正確な言い方をすると、「すでに他のパートで鳴っている『音名』の音」になるかと思います。
イメージとしては、以下のように対応し、フレーズとしての難易度を下げます。
「ド」の音はベース音のパートで鳴っているので、敢えて和音パートで鳴らさずとも、大勢に影響はない、という寸法です。
楽譜の構成上、パート数の少ないアンサンブルの場合など、「すでに他のパートで鳴っている音」がないときは、以下の対応を検討します。
和音における要らない音の少し高度な判別方法(音楽理論的判断)
上記の対策が取れない場合は、音楽理論に基づいた、少々高度な判断を行う必要も出てきます。
※…ちょっとややこしいので、拒否反応が出た方はこのセクションは読み飛ばしてください。
こちらのケースでは、ズバリ
「和音の5th(第5音)の音を省く」
という判断が有効です。
「和音の5thって何じゃ?」
って話かと思います。
初めて音楽理論に触れる方もいらっしゃるかもですので、簡単にご説明します。
まず、和音、いわゆる「コード」というものは、基本的に
「『ルート音(根音)』を基準に、3rd(第3音)・5th(第5音)を重ねたもの」
です。
楽譜で示すとこんな感じですね。
ルートであるC(ド)の音を基準に、3rdであるE(ミ)、5thであるG(ソ)の音が重なり、かの有名な「C」のコードになっていることがお分かりいただけると思います。
ついでなので、少々突っ込んだお話もしておこうと思います。
ときどきお見かけされるであろう、「Cm」君も紹介しておきます。
「Cm?あのCに見た目は似てるけど根暗なあいつ?」
って印象でしょうか。
まあ概ねそんな覚え方でよろしいかと思います。
で、よくよく楽譜を見ていただきたいのですが、CとCmは名前も似ていますが、構成音もだいぶ似通っています。
そう、「ミの音がナチュラル(♮)かフラット(♭)か」の違いだけですね。
実はメジャーコードとマイナーコードの違いはこれだけで、3rdの音こそが、コードの大まかな印象・役割を決定づける「重要度の高い音」だったというわけです。
ここで、この記事の当初のお話を思い出していただきましょう。
「音の重要度」の話です。
ピンと来ている方も多いと思いますが、今一度重要度の順番をまとめておきましょう。
・【1番重要】3rdの音→メジャー・マイナーを決めるため
・【2番目に重要】ルート→コードの基準を定めるため
・【あんま重要じゃない】5thの音→他の音と比較し、大きな役割を担っていないため★
長くなりましたが、そんなこんなで5thの音は、相対的に重要度が低いわけです。
なので、例えば曲の中でCのコードが鳴っていて、どうしても和音を間引いて簡単にする必要が生じた場合は、5thである「ソ」の音を間引くと良いわけです。
こんな感じですね。
(冷静に考えると「ソ」って開放弦使えるし、あんまり難易度下がらない気がするゾ。。)
「コードネームがわからない」という場合は、
「曲名 コード進行」などで検索すると、多くの場合ある程度正確なコード進行が載ったサイトが出てくるはずですので、参考にすると良いと思います。
フレーズが速く、右手が追いつかない場合
16分音符など、1拍の中で連続した音が多くて、とても右手が追いつかない。
そんなケースもあるかと思います。
特にポップスなど歌ものをギターアンサンブル用に編曲した場合などは、そんな状況に出くわしがちです。
そうした場合の対策について書いていきたいと思います。
音を省略する
…まあけっこう力技的な解決策ではあります。正直。
とは言え、そもそも「右手が追いつかない」レベルでスピード感のあるフレーズなわけなので、力技的に解決しても、演奏者が気にするほど、聴き手は気にならなかったりします。
例としては、このように拍頭に同じ音が連続するようなフレーズの場合、
このように1つ目の音を8分音符にして、2つ目の音を省略することで、難しいフレーズを簡単にできます。
この方法であれば、聴感上大きくイメージを損ねることもなく、演奏者・聴き手ともにハッピーな編曲になる、というわけです。
スライド(左手の活用)でやり過ごす
「BPM150超の16分音符」くらいから有効になり始める策です。
あまりに速いフレーズについては、右手でなく左手を解決してしまえ、という寸法です。
例えば元の楽譜でこんなフレーズだとしたら、
※BPM180くらいの16分音符、と仮定しましょう。はっきり言って我々のような民間人には弾けたものではない。
こんな感じでスライドにしてしまい、右手を使わずに解決するのが有効です。
「逃げるみたいで嫌だ」という武士のような魂を持った方もいらっしゃるかもしれません。(昔の私もそうでした)
が、難しいフレーズに真正面からぶつかって、結果として弾けずにアンサンブルが散らかるようなら、素直に「簡単に弾ける策」を講じた方が、最終的に演奏の完成度は高まるはずです。
練習に使える時間も有限ですし、難しい1フレーズを弾けるようにするよりも、他の曲含めて演出諸々に時間を割いた方が良いでしょうから。
ポジション移動が難しく、前後でもたつく場合
和音→メロディへの切り替えや、その逆のパターンなどでありがちな、左手・右手複合で難しいケースだと思います。
この場合は、「ポジション移動のための時間を確保してあげる」ことが有効です。
対象のパート単独で解決する場合と、他のパートと連携して解決する場合の2パターンについて書いていきます。
対象のパートだけで解決する
「ポジション移動が難しいパート」単体で何とかする策です。
多くの場合、ポジション移動の直前まで音が詰まっていて、そのために次の音が間に合わないケースが多いのではないかと思います。
なので、ポジション移動の直前の音を長めの音(目安としては4分音符)にしてあげて、ポジション移動のための時間を確保してあげます。
イメージとしてはこんな形です。
「Before」ではポジション移動直前まで音が詰まっている状況ですが、「After」の方では、ポジション移動直前の音を4分音符にしてあげて、ポジション移動のための時間を確保しています。
単独のパートでの対応が難しい場合や、他のパートとの分担・連携が可能な場合は次の対応策を検討します。
ほかのパートと連携して解決する
「ポジション移動が難しい」パート単体ではなく、他のパートと連携して解決する策です。
基本的な考え方は同様に「ポジション移動のための時間を確保してあげる」ですが、他のパートと上手く音の分担をしてあげるイメージです。
具体的には、ポジション移動直前の音を、他のパートに引き取ってもらうことで、ポジション移動のための時間を確保します。
楽譜の例としてはこんな感じです。
「Before」では、
・和音パート(下)→ポジション移動直前まで音が詰まっている
・メロディパート(上)→小節頭でフレーズが一区切りしている
↑こんな状況なので、「After」では、「前の小節(2拍前)から和音の役割を入れ替えてしまい、浮いた2分休符の間にポジション移動を行う」といったアレンジにしています。
譜例にも書いていますが、案外後者の方が「お、メロディパートが和音になるのかな」といった予告感、もといアンサンブル感が出てカッコ良かったりします。
まとめ
ギターアンサンブルにおける難しいフレーズについて、ケースに応じた編曲を行い、簡単にする。
和音の音数が多く、左手が追いつかない場合
以下いずれかの音を間引き、簡単にする。
・既に他のパートで鳴っている音
・重要度の低い5thの音
フレーズが速く、右手が追いつかない場合
以下いずれかにて、右手の負担を軽減する。
・連続した音を省略する
・スライドでやり過ごす
ポジション移動が難しく、前後でもたつく場合
以下いずれかにて、ポジション移動のための時間を確保する。
・前の拍の音を長い音符に変える
・他のパートがフレーズを引き取り、前の拍を休符にする
冒頭でも触れましたが、ギターアンサンブル編曲の実践的なやり方にご興味がわいた方は、以下のnoteを見てみていただけると嬉しいです。
【誰でもできる】ギターアンサンブル編曲の手順書
ここまで読んでいただきありがとうございました。