クラシックギターの曲の中でも、初心者向け・簡単かつ知名度が高めで、さらにはコンサートプログラムとしても堪え得るおすすめの独奏曲・名曲をピックアップしてみました。
クラシックギターを始めてみたけど、初心者が弾きやすい曲ってなんだろう?
ソロギター初心者におすすめの曲って?
クラシックギターを始めて間もない初心者の頃、誰もが気になって調べたことだと思います。
私もかつてはそうでした。
例によって「タンゴ・アン・スカイ」だとか「サンバースト」みたいな派手な曲に挑戦しては返り討ちに遭ってましたが、そこで学んだことは「難易度が低めな曲・簡単な曲でも、丁寧に弾き切る練習をするのが上達の近道」ということでした。
ついでに有名な曲のワンフレーズだけ弾き散らかす奴は顰蹙を買うことがわかったのも尊い経験です。
派手な曲をつまみ食いしてモチベーションを維持するのも大事ですが、並行して比較的簡単な初心者向けの曲も練習し、演奏技術を効率良く鍛えるのも上達のコツですね。
前置きが長くなりましたが「クラシックギター初心者におすすめの曲」、紹介していきたいと思います。
※お忙しい方向けに、YouTubeプレイリストでまとめましたので、流し見でもいただけると嬉しいです。
目次
クラシックギター初心者におすすめの曲
禁じられた遊び(愛のロマンス)
1952年のフランス映画「禁じられた遊び」のテーマ曲で、ギター独奏曲としてはド定番なので、曲名は知らずとも聴いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
映画テーマとして、クラシックギターの巨匠ナルシソ・イエペスが編曲・演奏したことで有名になりましたが、作曲者は不明とされています。
シンプルながらも印象的なもの哀しいメロディと、長調に転調する場面での優しい雰囲気が印象的です。
難易度的には決して難しくはないですが、慣れてきたら1弦のメロディをアポヤンドで弾くことを意識したりと、表現・技術の練習がいくらでもできる、味わい深い曲です。(初心者卒業後に改めて練習してみると、自の上達を確かめられる感じですね。)
もちろんプロのコンサートでもプログラムとなっていたり、アンコールで演奏されたりもする名曲です。
余談ですが、50代くらいの方に「クラシックギターやってます」と話すと、高い確率で「禁じられた遊び?」と返ってくるケースが多いので、マスターしておくと「ちょっと弾いてよ」と言われたときにいい感じで返せるのでおすすめです。^^;
動画
村治佳織さんの演奏です。
楽譜
「全曲TAB譜付きで弾きやすい! 憧れのクラシック・ギター名曲選」収録。
ラグリマ(涙)
「ギターの父」フランシスコ・タレガが作曲したクラシックギター曲の中でも、「アルハンブラの思い出」と並んで有名な独奏曲です。
ギター初心者の方でも弾きやすいゆったりとしたテンポと、とても美しいメロディがおすすめポイントです。中盤の転調では一転して短調となり、哀愁を帯びた雰囲気となるのも魅力です。
初心者の方でも比較的弾きやすい難易度ながら、表現を追求できる幅はとても深く、プロのコンサートプログラムでも聴くことも多いです。
「比較的簡単」ながら、上達しても末永く楽しむことができる名曲です。
動画
斉藤松男さんの演奏です。
楽譜
「全曲TAB譜付きで弾きやすい! 憧れのクラシック・ギター名曲選」収録。
聖母の御子
「聖母の御子」はスペインのカタロニア地方に伝わる古い民謡で、ミゲル・リョベートによってクラシックギター向けに編曲されました。作曲者は不明とされています。
クリスマスシーズンには巷で聴くこともありますので、おそらく曲名は知らずとも「ああこの曲ね」と分かる方も多いかと思います。
明るく優しい雰囲気のメロディが印象的な名曲です。もちろん初心者の方でも弾きやすい編曲で、リョベートがギターの名手だったことが伺えます。
※先ほど出てきた「ラグリマ」作曲者のタレガの弟子で巨匠アンドレス・セゴビアの師だったようです。
リョベートはカタロニア民謡をクラシックギター独奏向けの編曲で何曲も弾いており、この「聖母の御子」と後述する「アメリアの遺言」という曲が特に有名で、セットでコンサートプログラムになることも多い印象です。
ご興味があれば是非「アメリアの遺言」とセットでマスターしていただきたいおすすめ曲です。
動画
パク・キュヒさんの演奏です。
楽譜
「クラシックギター名曲てんこもり BOOK Vol.1 ~愛のロマンスから11月のある日まで~ 」収録。
「セット」の「アメリアの遺言」もありますし、後でご紹介する「11月のある日」も入ってます。
その他収録曲も「将来的に弾きたくなりそうなツボを押さえた曲」となっていておすすめの楽譜です。(「カヴァティーナ」「アルハンブラ」「魔笛」や「タンゴ・アン・スカイ」など)
「スマホで聴ける! クラシックギター名曲セレクション」
こちらはTAB譜がついてて練習しやすいかと思います。
アメリアの遺言
「アメリアの遺言」は上記で紹介した「聖母の御子」同様、ミゲル・リョベートによってクラシックギター向けに編曲されたスペイン・カタロニア地方の古い民謡です。
「聖母の御子」とは打って変わり重々しい雰囲気の哀しい曲ですが、メロディはとても美しく、コンサートプログラムでもよく耳にする名曲です。
メロディと和音のバランスをとって弾く練習や、機会がなければ本当に練習することがないであろう「オクターブハーモニクス」の練習が効率良くできるのも良いところです。
「カタロニア民謡」シリーズとして、是非「聖母の御子」と併せてマスターするのがおすすめです。
難易度はどちらも比較的易しめで、両方マスターしていると「わかってるな」といった感じの良曲です。
動画
Andreas Grossmann氏の演奏です。(1924年ヘルマンハウザー1世での演奏のようです)
楽譜
「クラシックギター名曲てんこもり BOOK Vol.1 ~愛のロマンスから11月のある日まで~ 」収録。
月光(Op.35‐22)※練習曲第5番
スペインでは「ギターのベートーヴェン」とも呼ばれるフェルナンド・ソルが残した練習曲(エチュード)の中でも特に有名な作品で、「月光」の愛称で呼ばれています。
「練習曲」というと味気ない印象を持ってしまうかもしれませんが、ソルの書いた練習曲はどれも美しい旋律や親しみやすい雰囲気を持った名曲が多く、中でもこの「月光」は美しいメロディながらも比較的簡単で、初心者の方にもおすすめの一曲です。
作品番号は「Op.35‐22」ですが、クラシックギターの巨匠アンドレス・セゴビアが選んだ「ソルの20の練習曲」では第5番となっているため、「練習曲第5番」と言った方がしっくりくる方もいらっしゃるかもしれません。
動画
Uros Baric氏の演奏です。
楽譜
「セゴビア選 ソル20のエチュード」収録。後述の「夢」も入っています。
「全曲TAB譜付きで弾きやすい! 憧れのクラシック・ギター名曲選」収録。
目次上は「Estudio No.5」となっているので、セゴビア選の表記ですね。
夢(Op.35‐17)※練習曲第6番
「月光」に引き続き、ソルの練習曲の中でも親しみやすい曲で、「夢」と呼ばれ愛されています。
「練習曲」というと少々味気ないイメージですが、こちらの曲もメロディ・アルべジオがとても美しく、弾いても聴いても楽しい曲です。
もちろん難易度も比較的簡単で、クラシックギター初心者の方にもおすすめです。
ちなみにこの曲はセゴビア選の「ソルの20の練習曲」では「練習曲第6番」とされているため、「夢」の他に「練習曲第6番」と呼ばれることもあります。
セゴビア選の練習曲集はクラシックギター業界?では「マスターすれば一人前」とされることがあります。
初心者の方にはちょっと難しい曲もありますが、効率的に演奏技術の向上が望めますので、ぜひチャレンジしてみてください。
「20曲マスターする」という明確な長期的目標にもなりますので、モチベーション維持の観点からもおすすめですよ。
動画
Uros Baric氏の演奏です。
楽譜
「セゴビア選 ソル20のエチュード」収録。
グリーンスリーブス
伝統的なイギリス民謡である「グリーンスリーブス」も、クラシックギターで演奏されることが多い曲の一つです。
「イギリスでは誰もが知っている曲」と言われておりますが、作者や発祥は不明という不思議な曲で、16~17世紀には広く歌われていたとされています。
哀しげな雰囲気ながら、どこか懐かしさや親しみやすさも感じさせるメロディがとても印象的で、ソロギター向けに多くのアレンジが行われている名曲です。
テンポもゆったりとしておりフレーズ自体は比較的簡単ですが、丁寧弾いてあげれば非常にステージ映えする、初心者の方にもおすすめの曲です。
ちなみに、私も「グリーンスリーブス」をソロギター編曲・演奏してみましたので、よかったらご覧いただけると嬉しいです。(楽譜リンクもあります)
動画
石田忠さんの演奏です。
楽譜
「はじめよう! クラシックギター」収録。
Sunday Morning Overcast
「サンバースト」や「ムーンタン」で有名なアンドリュー・ヨークの作品です。
「ヨークの曲だし、難しいんじゃないの?」と心配になるかもしれませんが、この曲は変に速いフレーズもなく、ヨークの曲としては比較的簡単で、クラシックギターを始めて間もない方にも弾きやすい曲です。(ここで挙げている他の曲よりは難しいかもしれませんが)
これまで挙げてきた曲はスローテンポだったり、短調でかなしげな雰囲気の曲も多かったですが、この曲は思わず体が動いてしまうような明るく軽快なテンポが印象的です。
「古き良きギターの曲も好きだけど、楽し気な曲も弾きたいなあ」という方にはとてもおすすめの曲です。
動画
ヨーク本人の演奏です。
楽譜
10年前くらいは「アンドリューヨークベスト」という本人演奏CD付き楽譜集が容易に手に入りましたが、プレミアがついてしまってるようです。
海外サイトで取扱っているところを探した方が良さそうです。
Waiting for Dawn
同じくアンドリュー・ヨークの作品で、こちらは「Sunday Morning Overcast」とは異なり哀愁を帯びた独特の雰囲気がかっこいい曲です。
出だしのコードからM7(長7度)の和音なので、古き良きクラシックギター曲に慣れている方にはとても新鮮だと思います。
中盤以降も不協和音がありつつもそれが心地よい、独特の空気感があります。
初心者の方にも比較的弾きやすい曲としては異色の雰囲気で、「ミディアムテンポでクール目な曲が弾きたいんだぜ」という方にはおすすめの曲です。
動画
こちらもヨーク本人演奏の音源です。
楽譜
こちらも上記の「Sunday Morning Overcast」同様、国内での楽譜購入は困難なようでした。
曲名で検索かけると海外サイトでの扱いがあるようだったので、そちらで探した方が良さそうです。
11月のある日
キューバのギタリスト兼作曲家レオ・ブローウェルのギター曲の中でも特に有名な曲です。
中音域で始まる静かながら美しいメロディと、中盤の高音域の盛り上がるフレーズの対比が印象的な名曲で、クラシックギターを弾く人なら誰もが知っているといっても過言ではないです。
特に大萩康司さんの演奏がよく知られています。
ブローウェルの弟子のレイ・ゲーラが大萩康司さんのために書き下ろした「そのあくる日」とセットで覚えている方も多いかと思います。
これまでの曲と比較すると難易度は高めかと思います。
特に中盤の盛り上がるフレーズは、手の小さい方には辛いポジションのセーハが続き、右手のフレーズも速めのアルペジオを求められるなど、簡単とはいかない場面もあります。右手と左手の連動を意識することがコツといった感じですね。
半面、マスターすればコンサートプログラムとしても末永く付き合っていける名曲で、この曲を弾ければ初心者は卒業と言っても良いかもしれません。
「多少難しくても、末永く楽しめる曲を練習したい」という方にはおすすめで、ぜひ「そのあくる日」も含めてマスターしていただければと思います。
※「11月のある日」については、以下の記事に個別に情報をまとめましたので、良かったらご覧ください。
「11月のある日」の難易度・楽譜(TAB譜)・演奏者まとめ
動画
大萩康司さんの演奏です。
楽譜
全曲TAB譜付きで弾きやすい! 憧れのクラシック・ギター名曲選収録。
おわりに・基礎練習の動画
「クラシックギター初心者におすすめの簡単な曲」についてまとめてみました。
他にも色々とおすすめしたい曲はありますが、今回はこの辺にしておこうと思います。
また、今回改めてピックアップしてみて気付いたのですが、ヨークの曲を除くとクラシックギター初心者におすすめの曲(というか経験上よく演奏されている曲)って、3拍子の曲が異様に多いですね。
4拍子の曲よりも親しみやすいのかもしれません。
難易度については「全然簡単じゃないよ!難しいよ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、繰り返し練習することで必ず、少しずつ弾けるようになっていきますので、まずは同じフレーズだけでも1週間ほど練習してみてください。
1週間後にはコツを掴んで見違えるほど弾けるようになっているはずですし、上達を実感できることでモチベーションがかなり上がって好循環が望めます。最初は辛いかもしれませんが、必ず「練習してよかった」と思えるときが来るはずですよ。
※ギターアンサンブルも嗜まれる方であれば、ソロギター技術の向上=アンサンブル技術の向上にもなりますので、その観点でもおすすめです。
練習の際には、「クラシックギターの基礎練習」の動画をご参考いただけると嬉しいです。
TAB譜付き、動画と一緒に弾くだけなので続けていただきやすいかと思います。
ワンランク上のかっこいい曲・美しい曲・難しい曲にチャレンジしたくなった方はこちらの記事もご参考いただけると嬉しいです。※「美しい曲」は一部本記事と楽曲重複もあります。
ギターアンサンブル・クラシックギター重奏のおすすめ曲に興味がある方は、以下の記事も読んでいただけると嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ギターアンサンブルのおすすめ曲
かっこいいギター重奏曲