クラシックギターで最も難しい曲は何か?
多くのギター愛好家が疑問に思ってきたであろうこちらの問い、今回はクラシックギター歴(だけは)約20年の筆者の独断と偏見で「難曲」を難しいポイントと共に挙げていきたいと思います。
気になった曲だけでも見ていただけると嬉しいです。
目次
クラシックギターの難しい曲・難易度の髙い曲
モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲(F・ソル)
※演奏:Ana Vidovic(アナ・ヴィドヴィチ)
「モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲」は、「ギターのベートーヴェン」とも呼ばれるフェルナンド・ソルによって作曲された変奏曲で、コンサートプログラムとしても非常に親しまれている、クラシックギターにおいて非常に重要な楽曲です。
楽曲自体の素晴らしさは語るとキリがないので置いておきまして、まず第1の難しいポイントは「曲が長い」という点です。
前奏も含めると10分近い大曲となっていて、容赦なく奏者の気力を奪います。
とはいえ、変奏部分は繰り返しも多いので、見た目よりはボリュームが少ないのですが、その分「今どこの何回目だったっけ。。」と混乱しがちです。
また、何かとカットされがちな前奏部分では、「オクターブハーモニクス+親指での単音」という、地味に難しい奏法が出てきて開始早々消耗させられます。
エンディングの部分も、それまで散々神経をすり減らしたところに追い打ちをかけるように高速アルペジオで畳み掛けるようなフレーズが連続します。
弾きこなせると大変華のある名曲ですが、総じて、高い技術と集中力が求められる難曲だと言えます。(めちゃくちゃ良い曲なんですけどね。。)
アラビア風奇想曲(F・タレガ)
※演奏:猪居 亜美
「アラビア風奇想曲」は、「アルハンブラの思い出」で知られるタレガ作品の中でも、有名な一曲です。
比較的ゆったり目のフレーズも多いですが、開始直後及び中盤の盛り上がるフレーズにおいてはプリングを多用した高速フレーズが展開され、総じて高い難易度を誇ります。
「奇想曲」は「カプリッチョ」とも呼ばれ、イタリア語で「気まぐれ」を意味します。
その名の通り、気まぐれにも感じるようなテンポで演奏されることが多く、技術的な難易度だけでなく上手く崩して弾く「歌心」のようなものを求められる点も、この曲の難しいポイントだと言えます。
「アルハンブラの思い出」も同様ですが、中盤で長調に転ずる箇所の開放感・美しさが本当に印象的ですね。
大聖堂(A・バリオス)
※演奏:Ana Vidovic(アナ・ヴィドヴィチ)
「大聖堂」は、バリオス作品の中でも屈指の知名度を誇る曲ですが、同時に非常に難しい楽曲でもあります。
何と言っても第三楽章(動画4:33~)で終始展開される高速フレーズが手強く、非常に高い精度のハンマリング・アルペジオのテクニックが求められます。
…というか、ここまで「息つく間もない」曲って、あまりない気がしますね。
他の難曲にも、「長めの音」や「休符」で「ちょっと息抜き」みたいなポイントが多少ありますが、第三楽章では開始からエンディングまで「長めの音符・休符が1ヵ所もない」という、常軌を逸した構成になっています。
その難易度の分、曲名の「大聖堂」を思わせる荘厳さや終盤の迫力は圧巻の名曲です。
特にエンディング(7:23~)で低音が下降していくフレーズの格好良さは、何度聴いても鳥肌モノだと思います。
最後のトレモロ(A・バリオス)
※演奏:朴葵姫(パク・キュヒ)
同じくバリオス作品、「最後のトレモロ」も難易度の高い楽曲です。
原題は「神の慈悲に免じてお恵みを(Una Limosna por el amor de Dios)」ですが、バリオスの遺作となったことから、「最後のトレモロ」と通称されています。
トレモロ曲としては「アルハンブラの思い出」が最も有名ですが、比較すると「最後のトレモロ」の方が以下の点で難易度が高いです。
・高音フレーズが多く、左手が難しい箇所が多い
・メロディ/低音とも音が頻繁に変わる場面があり、両手とも忙しい
・「いやどこまで行くの」というくらいハイポジションのフレーズがある
ざっくり言うと、「アルハンブラ=ゆったり」・「最後のトレモロ=忙しい」といったイメージで、右手・左手ともに総じて「アルハンブラ」よりも難しい印象です。
もの悲しいフレーズが印象的ですが、「アルハンブラ」同様に中盤では長調となります。
トレモロという奏法自体の美しさも相まって、総じて素晴らしい構成となっています。難しい分、クラシックギターならではの魅力に溢れた名曲です。
アストゥリアス(I・アルベニス)
※演奏:John Williams(ジョン・ウィリアムス)
クラシックギター経験者の方であれば「禁じられた遊び」、「アルハンブラの思い出」の次くらいに「挑戦した曲」として名前が出てくる曲ではないでしょうか。
スペインの作曲家・ピアニスト「イサーク・アルベニス」の作品で、「現代クラシック・ギター奏法の父」と言われる「アンドレス・セゴビア」によってギター編曲されました。(原曲よりもギター版の方が有名な模様)
高度なアルペジオの技術と、ラスゲアードからのアルペジオといった、緩急と言いますか右手のコントロールが求められる点が非常に難しい曲です。
「伝説」と意味する曲名の通り、神々しいような荘厳な雰囲気が印象的な楽曲で、ギタリストにとって「いつか弾けたら」という目標にもなるような、名曲です。
セビリア(I・アルベニス)
※演奏:John Williams(ジョン・ウィリアムス)
スペインの都市である「セビリア」の名を冠したこの曲は、アルベニス作品ならではの華やかさ、明るさが魅力の楽曲です。
舞曲のリズムを基調としており、ギターにおいてはラスゲアード奏法を用いて演奏されることが多く、明るく楽しい雰囲気が印象的です。
中盤は対照的に短調となり、哀愁に満ちたメロディが展開される点も、この曲の魅力を増す要因となっています。
…と、聴く分にはとても楽しいのですが、いざ弾く立場になるとラスゲアードとミュートの繊細なコントロールや、短調に変わってからの決めとなるオクターブでの高速フレーズなど、とにかく簡単には弾かせてくれません。そもそもイントロのフレーズからしてプリングが難しい。。
また、難易度もさることながら、チューニングが「6弦=D、5弦=G」という点も厄介です。
経験者の方はお分かりいただけると思うのですが、変則チューニングの曲って「練習する気になりにくい」んですよね。。。
本気でやるなら、それ用のチューニングにしたギターがもう1本ほしいくらいです。
朱色の塔(I・アルベニス)
※演奏:John Williams(ジョン・ウィリアムス)
こちらもまたアルベニスの楽曲ですが、この「朱色の塔」もまた難易度の高い名曲として知られています。
アストゥリアスに通ずるものがありますが、こちらの楽曲もまた高速アルペジオが印象的であり、中盤のフレーズではラスゲアード奏法も出てくるため、右手のコントロール技術が高いレベルで求められます。
明るく華やかな雰囲気と、所々で顔を出す悲しげな雰囲気のギャップが非常に美しく、技術だけでなく表情豊かに弾きこなす表現力が必要になる点も、難しいポイントです。
ちなみに題名の「朱色の塔」は「アルハンブラ宮殿内の一角の塔」とも言われています。
タレガ作の「アルハンブラの思い出」もまた美しい楽曲ですが、同じ建築物からインスピレーションを受けた作品として、比較してみるのもまた面白いですね。
無伴奏ヴァイオリンソナタ 第1番 第2楽章 フーガ(J・S・バッハ)
※演奏:Ana Vidovic(アナ・ヴィドヴィチ)
「バッハの曲あるある」ですが、この「フーガ」も全編通して声部が多く、高音低音共に複雑な動きを求められる点が非常に難しい楽曲です。
序盤から要所要所で見られる、アルペジオで駆け上がってからの高速フレーズが連続する箇所などは、右手・左手ともに繊細なコントロールが必要となり、終始高い難易度となっています。
半面、荘厳でかっこいい雰囲気は類を見ないレベルであり、「弾きこなせれば上級者」の難曲だと言えます。
私も一時この曲に挑戦しましたが、すぐに軽い鬱になって逃げだしたのを覚えています。
おわりに・基礎練習の動画
独断と偏見で「クラシックギターの難しい曲」を挙げさせていただきました。
「一番難しい曲」とか「ランキング」みたいな形では一概に言えないですし、他にも挙げたい楽曲はたくさんあったのですけどね。。(「ロンデーニャ」とか「フェリシダージ」とか)
ちなみに、個人的には運指を考慮すれば劇的に弾きやすくなる「アルハンブラの思い出」や「魔笛」よりも、逃げ場のない連続セーハで物理的に手首を破壊される「カヴァティーナ」が苦手でした。
日々の練習については「クラシックギターの基礎練習」の動画を作ったので、ご参考いただけると嬉しいです。
TAB譜付き、動画と一緒に弾くだけなので続けていただきやすいかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。